Part1 Pantom Blood
□侵略者ディオ・ブランドー その3
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「……ダニー、ご飯よ」
屋敷の裏手で飼われているダニー。二回目のエサはいつも私の当番だった。
"ワンっ"
「そんなにがっつかなくても、取ったりしないわよ」
差し出したエサを、ガツガツと食べるダニー。私はその様子を見て、思わずため息をついた。
「はぁ……」
"クゥン?"
「あぁごめんなさい。少し、考え事……ねぇダニー。あなたは、"誇り"ってなんだか分かる?」
ダニーはエサを食べるのをやめて、小首を傾げた。その行動がいやに人間臭かったので、私は思わず吹き出しそうになる。
"クゥーン?"
「…………ジョジョも、ジョースター卿も、エリナだって"誇り"を持っていいる。もちろん頭では、それがなんなのか理解してるつもりよ。でも、それを持つことの意味がわからないというか、定義がわからないというか。譲れないもの、というのが一番近いような、そうでもないような……」
私が本日二度目のため息をついた。その時、いつの間にか近づいていたダニーが、私の頬をなめた。
「……慰めてくれてるの?」
"ワンっ!"
「……フフ。ありがとう」
お礼がわりにダニーの頭を撫で、空を見上げる。嵐でも来るのだろうか、不気味な黒雲が覆い、遠くではゴロゴロという雷の音が聞こえる。
「……嫌な感じ。ダニー、ご飯食べ終わったら、すぐに家に入るのよ」
"ワン"
「そう、良い子ね」
そうして、屋敷の中に入ろうとした時、ものすごいスピードで、屋敷の中庭を直進する黒い影を見た。
「ジョ……ジョジョ……?」
ジョナサンだった。彼は勢いよく屋敷の扉を開けて、まもなく怒声が聞こえた。
嫌な予感がする。私は慌てて、ジョナサンの後を追いかけた。
――ジョナサンが、ディオに対して初めて、抵抗らしい抵抗をしていた。
どんなに罵られようと、反撃を喰らおうと、ジョナサンは諦めなかった。
ジョナサンはディオを両手で殴ろうとして、思いきり横から蹴りを入れられてしまう。ぐらり、とジョナサンの体が揺れる。
「いいぞォ! 新たな力がわいてくる、いい感触だッ!」
私はまた、いつかのように殴り返されてしまう。そう思って、一歩前に出たのだけれど、それは無用だった。
「えっ……」
ジョナサンはディオの蹴りに対して怯むどころか、彼の頭をつかんで動きを封じ込めた。
「こ、こいつ、蹴りを入れられてつかんでくるとはッ! もう一撃ほしいかッ!」
流石のディオもこれには驚いたようで、振りほどこうとするも、どこにそんな力があったのか、ジョナサンはがっちりと
離さなかった。
さらに、ジョナサンはディオの顔面に思いきり頭突きを食らわせた。呻き声を上げ、思わず仰け反るディオに、ジョナサンは……。
「ディオォォオオーッ!! 君がッ! 泣くまで! 殴るのをやめないッ!」
そう叫びながら、何発も何発も、ディオに拳を叩き込んだ。
ある意味猟奇的ともとれるその光景に、私の足はすくみ、震えていた。