Part1 Pantom Blood

□侵略者ディオ・ブランドー その3
2ページ/2ページ

「……ダニー、ご飯よ」

 屋敷の裏手で飼われているダニー。二回目のエサはいつも私の当番だった。

"ワンっ"
「そんなにがっつかなくても、取ったりしないわよ」

 差し出したエサを、ガツガツと食べるダニー。私はその様子を見て、思わずため息をついた。

「はぁ……」
"クゥン?"
「あぁごめんなさい。少し、考え事……ねぇダニー。あなたは、"誇り"ってなんだか分かる?」

 ダニーはエサを食べるのをやめて、小首を傾げた。その行動がいやに人間臭かったので、私は思わず吹き出しそうになる。

"クゥーン?"
「…………ジョジョも、ジョースター卿も、エリナだって"誇り"を持っていいる。もちろん頭では、それがなんなのか理解してるつもりよ。でも、それを持つことの意味がわからないというか、定義がわからないというか。譲れないもの、というのが一番近いような、そうでもないような……」

 私が本日二度目のため息をついた。その時、いつの間にか近づいていたダニーが、私の頬をなめた。

「……慰めてくれてるの?」
"ワンっ!"
「……フフ。ありがとう」

 お礼がわりにダニーの頭を撫で、空を見上げる。嵐でも来るのだろうか、不気味な黒雲が覆い、遠くではゴロゴロという雷の音が聞こえる。

「……嫌な感じ。ダニー、ご飯食べ終わったら、すぐに家に入るのよ」
"ワン"
「そう、良い子ね」

 そうして、屋敷の中に入ろうとした時、ものすごいスピードで、屋敷の中庭を直進する黒い影を見た。

「ジョ……ジョジョ……?」

 ジョナサンだった。彼は勢いよく屋敷の扉を開けて、まもなく怒声が聞こえた。
 嫌な予感がする。私は慌てて、ジョナサンの後を追いかけた。



 ――ジョナサンが、ディオに対して初めて、抵抗らしい抵抗をしていた。
 どんなに罵られようと、反撃を喰らおうと、ジョナサンは諦めなかった。
 ジョナサンはディオを両手で殴ろうとして、思いきり横から蹴りを入れられてしまう。ぐらり、とジョナサンの体が揺れる。

「いいぞォ! 新たな力がわいてくる、いい感触だッ!」

 私はまた、いつかのように殴り返されてしまう。そう思って、一歩前に出たのだけれど、それは無用だった。

「えっ……」

 ジョナサンはディオの蹴りに対して怯むどころか、彼の頭をつかんで動きを封じ込めた。

「こ、こいつ、蹴りを入れられてつかんでくるとはッ! もう一撃ほしいかッ!」

 流石のディオもこれには驚いたようで、振りほどこうとするも、どこにそんな力があったのか、ジョナサンはがっちりと
離さなかった。
 さらに、ジョナサンはディオの顔面に思いきり頭突きを食らわせた。呻き声を上げ、思わず仰け反るディオに、ジョナサンは……。

「ディオォォオオーッ!! 君がッ! 泣くまで! 殴るのをやめないッ!」

 そう叫びながら、何発も何発も、ディオに拳を叩き込んだ。
 ある意味猟奇的ともとれるその光景に、私の足はすくみ、震えていた。
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ