Part1 Pantom Blood
□ディオとの青春 その1
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何の目的があってか、ディオは石仮面をかぶった。直後、いくつも銃声が鳴り響いて、彼は窓の外に叩きつけられた。
でも、私は目の前の現実を、ただ受け入れる事ができずにいた。
地に伏すジョースター卿。ジョナサンがその半身を抱き起こし、私はその向かいに座り込んでいた。
卿の左手が震えながらも上がり、ジョナサンと私の頬を撫でる。ジョナサンは思わずその手を取った。私は逆の手を取った。
「と……とうさん」
苦しいはずなのに、卿は私たちに笑顔を向けていた。
「ああ…………なんてことだ。ナイフなんてふつうならよけられたのに………………!!
ディオがぼくの研究してた石仮面を、なぜか持っていたから、それに気をとられ驚いて…………」
「違う、違うわジョジョ……私のせいよ、私が、もっと早く動けたなら……!」
「ミツネ……ッ。とうさん……やっと元気をとりもどしたばかりなのに……ぼくの、身がわりに…………!!」
ジョースター卿が、私たちの言葉を否定するかのようにニッコリ笑った。それは、どこか晴れ晴れとしたものだったけれど、私たちの不安をあおらせるだけだった。
「径が小さいので……小指に…………して…………いたが、死んだ……かあさんの……指輪……だ…………」
スルリと、ジョナサンの手から卿の手が滑り落ちた。
「とうさん!」
「旦那様ッ!」
『ジョースター卿!』
警察が手当てだ、医者を呼べと騒ぎ始める。
でも、憎らしいことに、私はジョースター卿はもう助からない事を知っていた。
彼が突き刺されたのは急所だとわかっていたから……きっと、スピードワゴンも同じことを考えているでしょう。
私は信じたくなかったけれど。
「わ……わしの責任だ!わしが20年前、奴の父親を!ああ……!ディオ・ブランドーの父親を流島の刑にしていれば、こんなことにはならなかったんだ!」
その時、屋敷にいた警部が頭を抱えてそう叫んだ。
そもそも、ジョースター卿がディオを養子にしたのは19年前、馬車の事故で負傷していたジョースター卿をディオの父親をダリオ・ブランドーが介抱したからだ。というのが表向きの理由。
しかし、ダリオ・ブランドーはというのはこすずるいただの悪党で、その日事故を幸いに金品を漁っただけなのだ。
しかし……ジョースター卿は"その事を知っていてディオを養子にしたのだった"!
昔の私なら理解出来なかったでしょうが、今ならわかる。
きっと、ジョースター卿は貧困のなかにいたブランドー一家を哀れんだのだろう。自分が同じ境遇だったら、同じことをしていたかもしれない、と……。
「わしはあの時、奴の父親を流島の刑にすべきだったんだーッ!そうすれば、ディオを容姿にすることもなかったろう!」
……もう遅いわ、後悔したところで、何もかも遅いのよ……。だってもう、この方の鼓動は、こんなにも弱くなってしまっている……。