Part1 Pantom Blood

□過去からの手紙 その1
1ページ/3ページ

 ――7年の月日が経ち、私たちは大学に進学した。
 今日はその大学の、ジョナサンたちが所属するラグビーの試合。最後という事もあってか気合いの入り方が違う。
 私は選手の控えの席で見ていた。
 ジョナサンがボールを取り、うるさく雄叫びを上げながらゴールへ突進する。その彼に、相手校の選手がタックルする。それも一人で足りるはずはなく、最終的に四人が飛び込んでようやく彼は動きを止めた。でも、ボールを奪われる前にジョナサンはボールをパス。取ったのはディオだった。持ち前の華麗な走りで、次々相手選手を抜いて行く。そして、ゴールにトライした。
 ここで試合が終了する。勝ったのは私たちヒュー・ハドソン校、最後の試合を優勝で飾ることが出来たのだ。
 固く手を握り、笑いあうジョナサンとディオ。いつぞやのいがみ合いなど、その姿からは想像も付かない。
 私はため息をつき、二つ分の水とタオルを持って、二人にそれを投げた。

「わっ」
「何が"わっ"よ……いつまでも暑苦しい事やってんじゃないわ。さっさと水分補給して。見た目以上に汗はかくものなのだから」
「ミツネ! 今日の試合はぼくただけの活躍じゃない。チーム全員を最高のコンディションに導いたマネージャーの君がいてくれたからだ!」
「…………誉め言葉として受け取っておくわ」

 ディオの賞賛の言葉を、私は軽く受け流しておいた。
 すると、誰が頼んだのか、私の紹介アナウンスが入る。

『おおっと! 今回の雄二人に水とタオルを渡したのは! ミツネ・ヒサナガ!! 文学で右に出るものは無しッ! 小説の世界で何度も素晴らしい賞を受賞しており、既に全国の新聞社から専属新聞小説家としてのオファーが殺到しているとの事! 年はジョナサンらと一つ下ですが飛び級で同じ学年となっておりますッ!! マネージメントも非常にうまく、正にッ! この優勝は彼女の支援があっての事ではないでしょうか!!』

「ははは……有名だね、ミツネ」
「目立つのは好きじゃないわ。うっとおしいもの」

 実際、嫉妬や何やらで嫌がらせを受けたりするもの。それ自体は大したこと無いけど、いろいろ面倒くさいのよね……。
 ふと視線をずらせば、ディオが広報部の連中にインタビューを受けている。にこやかに質問に答えるディオ。
 ……その化けの皮が剥がれるのがいつか。私はディオ笑顔に隠された本性を射抜くように、彼を睨み付けた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ