Part1 Pantom Blood
□侵略者ディオ・ブランドー その2
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――ある休日の朝。洗濯物を終えた私はジョナサンの部屋に行った。怪我の様子を見なくてはならないからだ。
彼の部屋に近づくにつれ、ガタガタという、まるで漁るような音が聞こえてきた。と思っていたら、それは彼の部屋から出ているものだった。
無言のうち、ドアを押す。鍵はかかっていない。入ると、ジョナサンが複数の引き出しを明け閉めして何かを探していた。
「おっかしいなあ! ぼくの時計がないぞ!」
探し物は時計のようだった。私はため息をついてジョナサンの傍に寄る。目に貼られたガーゼは痛々しかったけれど、もう大丈夫そうね。
「あ、ミツネ! なぁ、ぼくの時計、どっかで見なかった? さっきっから探しているのだけれど……」
「……知らないわ。あなたの事だから、どこかに落としたんじゃないの?」
「えー……だって昨日、ここに入れたのを覚えてるんだよ……?」
「そんなこと、尚更知らないわよ。時計がひとりでに出ていくなんて事があるわけないのだし……」
すがるような表情をするジョナサン。私も探せと言うの?
本日2度目のため息をついた時、ジョナサンが私の後方を見てはっと、息を飲むような声をだす。
後ろを振り返ると、ドアのところにディオが寄りかかっていた。どこかに出かけるのだろうか、彼は外套を着こみ、その手には、ジョナサンが探していた彼の時計が握られていた。
「少しの間、この時計貸してくれよな……ぼくは時計を持っていないんでね。
おっと! 友達に会う時間に遅れる……」
そして、さも自分のものかの如く時計をポケットに入れると、ディオはその場を離れた。
もう、あの時計は戻って来ないでしょうね。
ジョナサンは何も言えず、また何も出来ず。驚きの表情のままそこに突っ立っているだけだった。
「取り返さないの?」
「……もぅいいよ。どうせ無理だろうし。ミツネ、外へ行こう。気分転換したい」
「またジョースター卿に隠れてパイプを吸う気ね?」
「うっ……どうして分かったの……?」
「昨日もそうだったから。……ふん、今日のところは見逃してあげるわ」
「えっ!? いいのかい?」
「次はどうだかわからないけどね」
「ありがとうミツネ! 恩に着るよ!!」
「……単純馬鹿」
「? 何か行ったかい?」
「何にも。 ダニーもつれて行くでしょう。私、先にあの子と門で待ってるわ。さっさと準備して来なさい」
「……? う、うん」
私は納得ねいかないような表情をするジョナサンを置いて外に出た。
ジョナサンのあの感じなら大丈夫だろう。私はそう思うことにした。