Long(JOGIO-Assassino)
□みえないけども
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「フィオーレ。話がある」
仕事から帰ってくるなり、リゾットはフィオーレに向かって真面目な顔で…こう言った。いつになく真剣な声、厳しい表情。彼女だけでなく、近くにいたイルーゾォとギアッチョも、固唾を飲んでリゾットの次の言葉を待っていた。
「……明日、お前に仕事が入った。お前は俺たちとともに、任務をこなさなくてはならない」
「にん、む……?」
「本気かよリーダー」
ソファーで新聞を読んでいたギアッチョが、それを折り畳んで納得のいかなそうな表情で問う。隣のイルーゾォも、同じ表情だった。
「確かにフィオーレはいろんな知識を身に付けた。体術だって会得している。その辺のチンピラには勝てるだろ。だが、俺たちが仕事で相手すんのはそういう奴らばかりじゃねぇんだ。いくらヘイリーの能力があったとしても、時期が早すぎるんじゃぁねぇか?」
「俺も同意見だ。会得している体術だって、まだまだ完璧とはいえないんだぞ。どうしてそんなに急ぐんだ?」
リゾットは黙りこむ。フィオーレは空気が重くなった事に不安を感じたのか、彼の服の裾をつかんだ。
「……組織のボスは、フィオーレを知っている」
『?!』
リゾットの言葉に、二人は大いに驚いた。これまでフィオーレをさまざまな場所に連れて行ったが、組織自体には彼女の存在を隠していた。彼女の持つスタンド能力、攻撃出来ない面を省いても、裏世界ではかなり強力なものである。故に、その存在を知られては奴らは彼女を欲しがるだろう。そう考えての事だった。
「今回は、敵対組織のボスを暗殺することだそうだ。何でも、そいつは最近麻薬取引に手を出し始めたらしい。麻薬は独占したいところなのだろう。組織は、新入りの力を見てみたいそうだ」
「……新入り、ねぇ……これまで誰が入ってこようが抜けようが何の反応も示さなかったクセによ。勝手な事を抜かしやがるぜクソが」
「それっぽい理由つけて……なんて、出来るわけないな」
「……」
すると、裾をつかんでいたフィオーレが、口を開いた。
「リゾット……」
「む、どうしたフィオーレ」
「にんむ、こなす。みんな、うれしい……?」
「!……まぁ、そうだな……」
「……わたし、やる。にんむ、する」
「フィオーレ……」
「おいフィオーレ。言っておくがな、任務ってのはいつもお前がやってるのとは違う。痛い思いも苦しい思いもする。それでも……いいのか?」
ギアッチョの厳しい言葉と表情。だがその中には、心からフィオーレを心配する気持ちが汲み取れた。彼女はジッとギアッチョを見つめ、そしてリゾットに向き直る。
見上げたその濁った隻眼には、確かに覚悟の光があった。
「わたし、やりたい。みんなよろこぶ。それは、うれしいこと」
「…………そう、か」
リゾットは一度だけ頷き、その場に膝を付く。フィオーレに視線を合わせると、彼女の肩に手を置いた。
「わかった……ただ無茶はするな」
「うん」
そして、フィオーレのその小さな体を、リゾットはぎゅっと抱き締めた。
「……巻き込んでしまって済まない。お前の事は命を懸けて守ろう」