Long(JOGIO-Assassino)
□そしてであう
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フィオーレをアジトに連れ帰ったリゾット。チームの反応はほぼ予想通りだった。
「あぁ? 何だこのガキは?」
「服とか随分とボロいね」
「それに傷だらけ……」
「へぇ、リーダーにはこんな趣味があったんだ」
「ンな訳ねーだろうが」
「怯えてやがるのか? あんたの後ろに隠れたままだぜ」
見知らぬ男たちにジロジロ見られ、怯えているのだろうか、リゾットの服の裾を掴んで固まってしまっている。
「こいつの名はフィオーレ。今日からこのチームの新しいメンバーとなる」
「ハァッ?! マジに言ってんのか、リゾット!」
「しかもフィオーレって、明らか偽名じゃないの?」
「偽名……まぁ偽名だな。名が無かったので、即席で俺がつけたのだから」
「リーダーネーミングセンス無さすぎッ!」
プロシュートたちが大声を張り上げると、フィオーレはいっそう怯えてリゾットの背に身を隠した。
「……ていうかよォ。チームに入れるって事は、そいつスタンド使いなんだろォなぁ?」
ホルマジオの言葉で場の空気が一変する。ピンと糸が張り詰めたように、緊張に包まれた。
「……ああ。当然だ。真人間を入れられるほど俺たちに余裕が無いのは知ってるだろう」
「まあな。で、どんな能力なんだ?」
「道中でいろいろ試したから分かったが……口で説明するのは少し難しいな。見たほうが早いだろう。……そうだな、ペッシ」
「えっ、オレっすか……?」
「お前の"ビーチボーイ"で、フィオーレを釣ってみろ」
「えっ?! でもそれ、ヘタしたら死んじまいますよ!?」
「解除すれば言いだけの話だ。安心しろ、おそらく大丈夫だ」
「? まぁ、やってみますけど……」
するとペッシは、手から自身のスタンド"ビーチボーイ"を発現させ、フィオーレに向かって構える。そして、大きく振って先端の釣り針を、フィオーレ目がけて投げた。普通ならば、この釣り針はフィオーレの体に引っかかるはずなのだが……。
『!?』
フィオーレの背中から、青い肌をした女性が現れた。頭に兜をかぶっているので顔は見えない。ウェディングドレスを纏った――おそらくは彼女のスタンドなのであろう――それは兜から長く伸びるベールを持ち、フィオーレの体を包み込む。ビーチボーイの針はベールに接触すると、ガラスが割れたような音がして弾かれてしまった。
「ほぉ……こりゃスゲェな……」
プロシュートが思わず言葉を漏らす。
「……フィオーレのスタンドは、どうやらスタンド攻撃だけではなく、その能力も無効化してしまうらしい。俺の"メタリカ"の磁力も効かなかった。俺のナイフでの攻撃もはじき返されてしまったから……おそらく銃も効かないだろうな。俺はこのスタンドを"ヘイリー・ウェステンラ"と名づけた」
「それって、無敵ってことじゃねーのか?」
「いや、残念ながらいくつか弱点がある。まず、ヘイリーは守りに特化し過ぎているせいか、一切の攻撃行動ができない。またこの通り……」
と、リゾットはいきなりフィオーレに向かって拳を突き出した。彼女のスタンドは何の反応も示さない。
「肉弾戦において、ヘイリーは発動しないようだ。任務の時は誰かが同行してやら無くてはならないだろう。体術も教え込まないとな」
「……まぁ、それでも強力なスタンドって事には変わりないな」
一同がうなずく。リゾットがその様子を見て、満足げな微笑を浮かべた。
「なら……異論は無いな?」
「あぁ。よろしくなフィオーレ」
「賛成っス。フィオーレ、ようこそ、だな」
「構わないぜ」
「いいんじゃないか? こう見ると結構可愛いし」
「男所帯に女が入ってくるなんて、願っても無いことだからね。フィオーレ、まぁ頼ってくれよ」
「きめぇよ。……まぁ、あんたの案なら俺は従うぜ」
「よし……フィオーレ」
リゾットは片膝を付き、フィオーレと向き合った。
「今日からココが、お前の家だ」
「い、え……?」
「あぁ。そしてここにいる全員が、今日からお前の仲間となろう。俺を含めて、困った事があったなら頼るといい」
「なかま……うん」
するとフィオーレは、クルリとプロシュートたちに向き合い、戸惑いながらも小さくお辞儀をした。