俺様は謎の男です
□TURN002 新しい生活
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「これでデートは3回目。てことで記念に私のファーストキスあげる」
「ありがとう。でも、残念ながら俺はファーストじゃありません」
とある場所で、少年と少女はキスを交わした。それは一瞬の出来事で、少女は微かにはにかんだ。
「ありがとう、俺なんかを好きになってくれて」
「ううん、いいの。私は、あなたが好き」
少女の世界は、少年一色だった。
少年の世界は、虹色だった。
私は泉という。陸人の親友で、何でも相談しあえる仲だった。彼が麻衣ちゃんと付き合っているのも知っている。彼が納豆嫌いなのも知っている。私が、彼を一番知っている。
私の陸人への想いが、絶対に届かないということも知っている。
みんな陸人を嫌いだとか、気持ち悪いとか、ナルシストとか言うけど、私はそうは想わない。
彼は優しくて、人をからかうのが好きな人だ。みんなが気持ち悪いとかいうけど、それはただみんなを和ましていただけ。
そして、みんなから嫌われようとしている。その理由だけは、教えてくれない。
陸はブサイクなんかじゃない。彼が本気で髪をセットしたらきっとみんなイケメンっていうはず。
「お前、いつアメリカへとぶんだっけ?」
「来週だって言ってるでしょ」
「ああ、そうだったそうだった」
私は父の仕事の都合上アメリカへ行くことになった。少なくとも、二年はかかるだろう。
……陸人に、想いを告げようか。
いまだに迷いがあった。たとえ想いが実らないとわかっていても、気持ちは伝えたい。でも、とてつもなく怖かった。まるですべてを失ってしまうかのような恐怖。
私は、どうすればいいの?
そして、旅立ちの日がやってきた。陸人は今まで見送りに来てくれていた。
荷物はすでにアメリカへ送られている。
後は、私の想いをここに置いていくだけ。
「ねえ、陸人」
「ん?」
「あなた、すっごい嫌われてるよ」
「何!お前すっげーきずつくぞ!」
「だって本当のことだもん」
「……俺は嫌われ役でいいよ」
「なんで嫌われようとしてるの?」
「もう知ってるんだろ?」
「……うん」
理由を知ってしまったとき、私は泣いた。教えてくれたのは、彼のお姉さん。
―逃げないで、私はあなたを応援してる。
「ねえ、陸人――」
私は、もう逃げない。
「私は、誰よりもあなたのことが好き」
「え?」
予想通りだった。彼はわけがわからないといった顔をしている。
「私のこと、絶対忘れないで」
「……泉」
彼は私の名前を呼んだ後、唇を奪った。
今度は、私がわけがわからないという表情をしていた。
「お前こそ、俺を忘れんなよ。この世界一カッコいい俺を」
「……バァカ」
その後。
麻衣は、家で留守番をしていた。家には彼女の他に誰もいない。だから、陸人に来てもらった。
でも陸人は、今日会ったことを話した。
泉と、キスをしたことも。
「……」
とりあえず自分の部屋に呼んでみたものの、なぜか心がスッキリしない。
麻衣は、不安を覚えた。
自分より、泉のほうが魅力的だから。陸人の心を、奪われそうで怖かった。
だから、麻衣は束縛という方法を選ぶことにした。
それは、身青年の彼らにとって踏み越えてはならない境界線。
「リク……」
「なに、どうし……」
瞬間、舞は陸人をベッドに押し倒し
、強く唇を押し付けた。口内に舌を這わせる。
「ねえ、お願い……」
「俺ら、まだ中学生で……」
「お願い!私は、今すぐしたいの」
「……」
麻衣はこれ以上反論を許さなかった。
そのまま陸人は麻衣に身を任せた。
2人は、境界線を踏み越えた。