俺様は謎の男です
□TURN001 出逢い
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小学5年生の西条麻衣は、数人の友達とバスで行ける距離にあるショッピンモールに来ていた。恋愛映画を観た後、友達とゲームセンターにやってきた。
ここのゲームセンターの大半はUFOキャッチャーだ。
共に来た友達2人はシューティングゲームをしているので、その間麻衣はUFOキャッチャーを見て回っていた。
特に、これといったものはない。でもまだ半分しか見て回っていない。
気に入るようなものはあるだろうか?
そう考えながら見て回ると、あるものを前に麻衣は足を止めた。
小さくて可愛らしいリスのぬいぐるみ。人目見ただけでほしいと感じた。
一目惚れのようなものだ。麻衣は財布の中身を確認すると、すぐに小銭を入れてぬいぐるみを取ろうとする。
1回目はとれずに失敗。
2回目はとれたが途中で落下。
3回目も失敗。
「なんでとれないの〜?」
もう諦めようか……そう想い始めていた。でも、そんな時だった。
「もう変わってくれる?俺そのリスのぬいぐるみとりたいんだよね」
同い年ぐらいの男の子が話しかけてきた。どこにでもいそうなくせ毛の多い男の子。
「あ、はい、どうぞ」
「ありがと」
男の子は麻衣にお礼を言うと、小銭を入れてゲームを開始。意図も簡単にリスのぬいぐるみをゲットした。
「すご」
思わず麻衣も言葉をもらした。
「おお、可愛い。じゃ、これあげる」
男の子はリスのぬいぐるみを麻衣に渡した。
「え、いいの?」
「ああ、君これほしかったんじゃないの?」
男の子が強引にも麻衣にぬいぐるみを受け取ってもらおうと彼女の手に握らせた。
「あ、ありがとう」
「どういたしまして、それじゃあ」
「あ、待って!」
立ち去ろうとする男の子を呼び止めた麻衣。男の子がゆっくりと振り返った。
「なに?」
「名前はなんていうの?」
しばしの沈黙の後、男の子は無邪気に笑って応えた。
「斑神陸人」
運命の出会い、だと想った。でも彼の人生は大きく狂いだすことになるんだ。
「転校生?この時期に?」
「別におかしくはないでしょ。高二の二学期なんてよくある話じゃん」
とある高校。今日は、転校生がやってくる。
「一体、どんな転校生なの?」
私は友達といつもと変わらず学校に登校してきた。この高校は県立で外国からの留学生も多く、バイク通学も認められていた。部活数も県でトップを誇る。
正面玄関を通過した途端、その少年はバイクでやってきた。
「もしかして、あれが転校生?」
「……そうだね。中型のバイク乗ってきてる人初めて」
バイクから降りた人物はヘルメットを取った。サングラスをしている彼は身長が高くて誰も寄せ付けないようなオーラをまとっていた。くせ毛の多い短髪だがサングラスをとった瞬間の彼の表情はとてもさわやかで好青年という印象を受けた。
「斑神陸です、以後よろしく」
同じクラスだった。第一印象は先程の通りだが、良く見ればイケメンに見えなくもない。
声は透き通っている。今のところ、やはり誰も寄せ付けないオーラを感じる。
この学校は制服ではなく私服である。斑神陸という名の彼はなかなかのセンスだった。
ヴィジュアル系。黒と白で統一されたその服装はクラスの女子たちを虜にするにはじゅうぶん。
彼は、一気に学園の人気者になった。
女子生徒からの人気も上がり、男子生徒からの信頼も上がり、学園のボスという立ち居地にいた男子生徒をバスケで圧倒した。
斑神陸は、学園のトップにたった。
「お悩み解決屋?」
「自称だよ、自称」
彼は自分をお悩み解決屋と呼び、みんなの不安や悩みを解決するという。
実際に、私の親友も、彼のおかげで親子の間の亀裂がなくなった。
「じゃあ、次は私のばんかな」
「ああ、任せろ。俺がお前を幸せにしてやるさ」
今まで一色しか見えなかった高校生活が、彼がやってきただけで虹色に見えた。
でも、それはまだ先の話。
この話を語る前に、彼の過去を語らなくちゃいけない。
それは、ここに転入してくるまでの物語。
彼が、人気者になるまでの物語。