AKB48 青春ゲーム

□第五話 青春の一ページは続く
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「さぁ、ジェットコースターの次は何に乗る?」
 優子は、完璧に子供だ。敦子も、中学生らしくはしゃいでいる。
 ジェットコースターを乗り終えた三人は次に体験するアトラクションを選んでいた。
「お化け屋敷なんてどう?」
 提案したのは直人だ。
「えぇ?やめようよぉ」
 優子が即座に否定した。それを視た直人は少しからかいたい衝動に駆られた。
「怖いの?」
「えぇ、そりゃ怖いよぉ。敦子だってそうでしょ?」
「うん……まあね」
「敦子も……へぇ、やっぱ女の子なんだね。君みたいな元気な女の子にもこんな弱点が」
「どんな人にだって弱点ぐらいあるよ、ナオ君。インディ・ジョーンズだってヘビが苦手なんだよ」
「確かにそうだね」
 それでも直人の意見は変わらず、多少強引にお化け屋敷に連れていった。
「えぇ……ちょ」
「学校の掲示板に前田敦子は世界一の臆病者なんて見出しの新聞が張られるかもしんないね」
 直人のその言葉は、本当に起こりかねないので仕方なく二人はお化け屋敷へ。今の直人はからかうのが好きなただの子供だ。現在と比べると少しやんちゃだ。
 五分列に並んでようやく自分たちの番になった。
「直人がイジワルだって今更気づいた」
 優子が言った。
「へぇ、そうなんだ。そういう君が怖がりっ子だってなのも今更気づいた」
 中に入ると、やはりそこは視界が薄暗かった。
 直人の左右に敦子と優子が並んで突き進む。
 しばらく突き進むと、床が軋む音が響いた。少し優子が肩を震わせた。
 軋む音がだんだん近くなってきた。そして……
「うわぁぁぁ!」
 幽霊のコスチュームをした男が後ろから脅かしてきた。
「「きゃぁぁぁぁ!」」
 直人の左右で二人の少女が悲鳴を上げた。優子は直人の左腕にしがみ付き、敦子は首に両腕を回してしがみついた。健全な男子中学生なら、これは喜ぶべき事態だ。何せ、簡単に言うと二人の美少女に抱き疲れているのだ。直人自身、喜ばしい。嬉しいのだけど……
「く……苦しい……」
 よほど怖かったのだろうが、直人に力強くしがみつきすぎて直人に被害が及んだ。
 それから七分ぐらいはその状態が保たれてしまった。おかげで直人は怖がる余裕すらない。
「早く行こう」
 直人は早くお化け屋敷から出たいと願うしかなかった。


 結局、直人は六回苦しみを味わうことになった。
「なんで直人、中一の時の文化祭ではあれだけ怖がってたのに、今は怖がらないの?」
「あの時とは状況が違うの」
 敦子の言っていること、それは二年前の中学一年時の文化祭のことだ。二年生のお化け屋敷に敦子と一緒に行った直人だったが、その時直人は凄く怖がっていた。
 ただ怖かっただけじゃない。アイドルとしてデビューした直人を知らない人は学校にはいない。二年生は後輩をからかうのが好きで仕事であまり学校にこれなくなった直人を標的にしたのだ。その結果、お化け屋敷で直人はしつこく幽霊に追い掛け回され、狭い通路を四つん這いで進むときには腕をしつこく握られた。約四人ほふぉ。
「はっきり言って、子分かっていうより、辛かった」
「あ、ごめん、トラウマだった?」
 敦子の言うとおり、直人はその日の出来事がトラウマになっていた。
 ちなみに、優子は話に全くついていけなかった。
「私、何にも知らないんだけどぉ」
「だって、優子。その時はもう卒業生だったじゃん」
「でもいっつも会ってるじゃん」
「まあ、いいじゃないか。次はあれに乗ろう」
 直人は適当に指差した。その先には、メリーゴーランドがある。
「あ、えっと……」
「……くすっ」
 敦子が小さく微笑んだ。慌てるアノとを視ておかしかったのだ。
「…乗ろうよ、ナオ君」
「…えっと」
 やられた。お化け屋敷の仕返しだな……チキショウ。
「いいよ、乗ってやるよ」
 直人はちょっと強気だった。実際、彼は負けず嫌いだ。こんなことでただし返しされるのは性に合わない。
 直人たちはすぐさまメリーゴーランドに乗った。直人は恥ずかしさを隠すのに必死だった。
 メリーゴーランドが発車したようだ。直人の乗る馬が徐々に動いていく。
「どう、ナオ君?すっごく楽しそうね」
「ああ、そうみたいだな」
 完全に優子の口元が吊り上っていた。悪魔みたいに。

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