AKB48 青春ゲーム
□第三話 休日
1ページ/1ページ
久しぶりのオフなので、直人は外に出かけていた。いつもは当麻と共に出かけているのだが今日はやめた。一人で出歩くのは滅多にない機会だ。
東京は人ごみが多い。いつもの見慣れた風景だ。
「何処に行くか……」
ノープランなのでまだどこに行くか決めていない。
「何処行くか……」
同じことを言ったな。
そんなときだった。
「あ、ナオナオ!」
「あれ?亜樹じゃん、こんなとこでどうしたの?」
偶然会ったのはAKBの高城亜樹。不思議ちゃんだ。
―五年前―
高城亜樹は、友達とショッピングモールにやってきた。そこにある書店に来ていた亜樹は、友達がトイレに行っている間小説を見ていた。文庫本が並ぶ棚の前に来ると、棚に並ぶ本の題名を流れるように読んでいく。あまり本は読むほうではないため、小説のページを開こうなんて想うことはなかった。
それに、亜樹は少々視力が悪く、今だって本を見るために眼鏡をかけている。
「う〜ん、どんな本が良いのかわかんないなぁ」
暇つぶしのように人差し指で円を描いていく。すると……
「これが良いと想うよ」
一人の少年が、亜樹に話しかけていた。長髪で、綺麗な瞳を宿していて、とても優しそうな人。
「これさ、すっごく面白いから、読んでみなよ」
少年は、一つの小説を亜樹に渡した。結構分厚い。五○○ページぐらいかな?
「この本はね、人の心の奥底を素直に描いた小説でね。色んな登場人物がいてみんな接点はないんだけど、どんどん接点を見つけて、そして新しい接点が作られて……最後にはハッピーエンド。きっとハマると想うよ」
少年の解説を聞く限り、よほどこの小説が好きなんだと想う。
亜樹は、小説を受け取った。
初対面の人にここまで話しかけれたのは初めてだ。だけど、なぜかこの人と喋っていると、心が落ち着いた。
「ありがとう、ございます」
「どういたしまして、それじゃあね」
少年は亜樹の元を去っていく。
初対面で、全然喋らなかった。けど、今も記憶に残っている。
―現在―
きっと、彼は忘れている。
亜樹はそう想っていた。
あの時小説を進めてくれた直人が今目の前にいる。
あの時の小説は今も大切に持っている。大切な、想いでの品だから。
ナオナオ、思い出して、お願い。
でも、その願いは叶わない。