AKB48 青春ゲーム

□第一話 幼馴染
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 うすぐらい路地を、前田敦子は歩いている。野良猫の鳴き声が聞こえる。
 生まれ育った町の道なのに、深夜というだけで恐怖が生まれる。
 一人で歩いているからだ。
 誰か、来てほしい。元気付けて!
 AKB48として芸能界へ入り、今はセンターだ。様々な重みを抱えてきた。
 センターの景色は、とても気持ち良かった。だけどそれと同時に、不安も大きかった。
 ある人のおかげで、敦子はその景色を見れている。
 その人は、同い年の幼馴染で、自分たちより先に芸能界でデビューを果たし、AKBより知名度も、人気も上。後ろで一つに結わえた長髪が特徴で、容姿端麗。
 でも、心に大きな欠点がある……。それは、彼を蝕んでいく大きな欠点である。
「直人、来てくれないかなぁ」
 そう言った矢先。
 敦子の前で、バイクが止まった。
 轟くエンジン音。おそらく、改造されている。
 黒を基調としたそのカラーは、運転手である少年にぴったりだった。
「おっす」
 ヘルメットをとったその少年は、まさしく幼馴染の境直人であった。
「直人、良いところに来た。家まで送ってくれない?」
「タクシー代払ってくれたら」
「えぇ!じゃあいい。女の子を一人置いていくような男なんてもう知らない。あぁ、私襲われるぅ」
「はいはい、特別に無料です」
「やった!」
 座席に跨り、直人にしっかりとしがみつく。
「あんまりきつくしがみつくなよ」
「は〜い」
 直人はバイクを発進させた。


          ○


 境直人は、完璧な人間だ。歌唱力、ダンス力共にパーフェクト。様々な資格を獲得しており、海外でも有名な存在。チェスも敗北経験なし。何事においても冷静に対処し、バスケにおいては関東代表と肩を並べる程。
 だが、そんな直人に一つの欠点が存在する。
 

 それは、不治の病を患っていること。


 今まで発見されていない新種の病原菌が細胞に侵食しており、ゆっくりとだが細胞が腐敗していく。それに伴って様々な症状が現れてくる。
 その一つが、記憶障害。専属の医者はアルツハイマーに近い病気と言っているが、実際なんなのかさっぱりわからない。免疫力次第では、後10年は生きることができる。
 だが、20歳まで生きることは、難しいといわれている。
 直人は記憶障害対策として、録音機で周囲の音を録音している。それを聞けば、なぜだか思い出せる気がした。
 彼の病気を知っているのは、敦子含め数名で、今この場に集まっている。
 それは、直人が住む一戸建ての家。外見はまるで洋館を思わせる。
 住んでいるのは直人唯一人である。両親は物心つく頃に事故で亡くし、また唯一の肉親だった姉も亡くしてしまった。
 今は、昼の二時ごろか。
 仕事を終え、夜まで仕事がないので直人は一旦家に帰ってきた。家には、幼馴染である敦子と大島優子がいる。その他に、小学4年生のときからの親友・健崎当麻と鮎川愛奈がソファでくつろいでいた。
 小学生の頃から、直人はずっとこの4人と過ごしてきた。姉を亡くしてすぐ直人は芸能界への仲間入りを果たした。
「やっぱり合鍵渡すんじゃなかったな」
「そんなこと言うなよ、俺たち親友だろ?」
 当麻が冷蔵庫に向かった。
「せっかくだからケーキ作ってやるよ。直人、一緒につくろーぜ!」
「おお、いいぞ。お前が作ったらまずいからな」
「言ったな!じゃあ、どっちが上手いか勝負だ!」
「じゃあ俺モンブランで」
「なんでお前がさき決めるんだよ!」
 こうして、直人と当麻のケーキ対決が始まった。

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