砂狼
□序章
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『忘れ物はない。
薬ももった』
ざっざっ
廃屋のなかから少女が現れた
少女というのは
いささか語弊がある
13・4歳くらいだろうか
明るいミルクティアッシュのかみに
黒い装束
頭に生えた白い耳に
こしのあたりの白い尻尾
歩いていた少女は
少しずつはや歩きになり
最終的にはかけだした
体が前傾姿勢になり
気づいたときに
そこにいたのは
少女ではなく白い狼
日の光があたり
銀色に輝く毛を翻し
狼は山の中に
かけだした
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