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□星空は知っている
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「ねーキュヒョン、あの星は
何ていう名前?」


私は望遠鏡から目を離し、
隣で星座の図鑑を読んでいる
キュヒョンに視線を移した。

彼はどれ?と言うと
望遠鏡を覗き込んだ。


「ほら、そこに見える3つの…」


私が星の位置を教えると
彼はあれか、と言った。


「あの星座はオリオン座って言って
冬の星座だよ。」

「あ、聞いたことある!」


私が嬉しそうにまた望遠鏡を覗くと
彼は言葉を続けた。


「オリオン座は南半球で見ると
逆さまに見えるんだよ。
逆さオリオンって言うんだ。」


そう私に説明する彼の目は
星に負けないくらい輝いていて
本当に星が大好きなんだなって思った。


私は薄い布団の敷かれた床に
仰向けに寝そべった。
そして彼も私の横で同じように
寝そべる。

どちらからともなく繋がれた
手の温もりを感じながら二人で
夜空を見上げた。

大きな窓ガラスの向こうに
広がる世界。まるで私たちは
この世で二人ぼっちの様に思えた。



「ねぇキュヒョン……私ね、
キュヒョンの事す…っ!」


彼は私の言葉を遮るように
突然唇を塞いできた。

驚く私をよそに彼は
深いキスを続けてくる。


「キュ…ちょっ…待って」


繋がれていた手を離して
服を捲し上げてきた。
胸に優しく舌を這わせながら
彼は私を見上げてくる。
何度も彼に愛されてきた身体は
微かに触れた指先でも私を悦ばせた。

私に自身を埋めて快感に
顔を歪ませる彼を
薄れゆく意識の中で
じっと見つめた。



あなたが好き―――
心の中でそっと呟く。



でもその言葉を
彼は言わせてくれない。
そして、彼も決してそれを
口にはしなかった。
私はこんなにも愛しい気持ちが
溢れているのに……







私たちは事情の後も
抱き合って眠った。
一瞬でも離れたくない
という私の我が儘。

朝目が覚めて最初に見る彼は
本当に穏やかな顔で眠っていた。
起こさないようにそっと彼の
腕から抜け出して、床に
散らばった洋服を身に纏う。

静かに部屋を出て行こうとした時、
彼が目覚めていることに気づいた。


「キュヒョン、おはよう」


彼の元まで行くと
腰を引き寄せて抱きついてきた。


「…もう行くの?」


寂しそうにそう
囁いてくる。

本当はまだ傍に居たい。
そう思いながら彼の頭を
優しく撫でる。


「…ごめんね、ドンヘが
待ってるから」


軽く彼の唇にキスをして
「また来るね。」そう告げて
部屋を後にした。



ドアが閉まる前に見えた横顔、
そんな泣きそうな顔をしないで…
たとえドンヘが兄弟のように
大切な存在でも、私に傍に居て
欲しいのなら、私を彼から
奪ってみせてよ。

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