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□橙色の灯火を
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「余計なお世話かもしれないけど。やめた方がいいと思うよ、それ」
「……え?」
キミに気付かされて始めた仕事を、キミに似た顔の人に止められた。
「だって、それ。ミアちゃんには見えないんでしょ? 虚しくならない?」
「……でも!」
「僕だったらゴメンだなぁ。他の人ばっか見えて、肝心の自分が見えないとか」
そこまでできた人間じゃないからかもね。
そう言ったあなたは、無邪気な顔でわたしを傷付けた。
虚しいに決まってるじゃないか。そんなの当然だ。
帰ってこないキミを待ち続けることですら苦しいのに、信じていることが苦しいのに、わたしが与える救いは、誰もわたしには与えてくれないんだよ。
そんなこと、言われなくても分かってるから。
でもキミと同じ顔で言われるのは、裏切られた気持ちになるからやめてほしい。
ボロボロになった心が痛むから、これ以上は言わないでよ。
「あぁ、本格的に降ってきたね」
ふわふわとした不安定な白い雪が、静かに舞い落ちてくる。
わたしの頬に触れたそれは、涙と一緒に溶けて流れ落ちた。
あなたの肩についたそれは、無造作な手つきで払い落とされた。
指切りした約束でも、そうやって簡単に破られてしまうんだって思うと、勝手に涙が溢れてくるんだ。
「やだなぁ、泣かないでよ」
「すみません……」
頭についた雪を軽く払ってくれたあなたは、困った顔をしていた。
勝手に傷ついたのはわたしなんだから、困るのは当然だけど。
あなたの無責任な言葉が、冷たく刺さったのは本当のことだし、それで泣くなって言うほうが無理だ。
だってあなたは、わたしがすがっていたいと思うものを、現実と言う壁で打ち砕いてくるんだから。
信じていたいキミの姿で、信じることを否定するんだから。
「可愛い妹が心配してるだろうから、僕はそろそろ行くけど」
「……」
「辺りも暗いし、寒くなってきたから気を付けて帰りなよ?」
それじゃあね、とあなたは背を向けて行ってしまう。
人込みに紛れて消えてしまう。
引き止めることなんかできなかった。
あの時みたいに、引き止められなかった。
涙ばかりが流れて動けないわたしが情けなくて、同じことを繰り返してしまう自分が嫌で。
キミと約束したのは、間違いだったの?
キミを信じて待っていたのは、間違いだったの?
「……ねぇ、わたしは間違ってたの……?」
雪が舞い落ちる暗い空を見上げて、わたしは返ってこない問いかけを投げ掛けた。
冷たい空気が、空っぽの心をキリキリと痛めた。