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□Level.Last みらい
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儀式の地、最奥の舞台。
より早くそこへたどり着きたいような、まだまだ着かなければいいような。矛盾した気持ちを抱えながらも、イノリは仲間達の歩調に合わせて、前へ進んでいく。
三人の主人公とその仲間、合わせて十数名が寂れた遺跡に集うのは、迫力に満ちた光景であろう。

ルックの元へ続く道の一歩一歩を進むごとに、今までの記憶が走馬燈のように巡る。
いきなりこの世界に降り立ち、わけのわからない力に翻弄され、旅をして、戦って。
嬉しいことも辛いことも、語り尽くせぬほど沢山あった。

そして、これからも。嬉しいことも辛いことも、沢山の人々に沢山の未来が待っている。

この世界で今を生きる人々の、未来を守るために。
叶うならば、ルックを救うためにも。
戦い抜く。

この戦いにかける想いが誰よりも熱く欲張りであるイノリは、気付けば床から足を浮かせ、翼を広げ、誰よりも早く最深部を目指していた。


幾許もなく、視界に現れる一人の青年の姿。
イノリをこの世界に召喚し、ゼクセン・グラスランドを激しい戦乱に巻き込んだ彼。
鼻筋の通った横顔は、憂いを帯びた目で空を見上げており、かつてないほど儚げだった。

「お待たせ。英雄ご一行の到着だよ。あなたの仲間は、皆逃げるか、敗れ去った……あとはあなただけ。ルック、こんなことやめよう?私はあなたに死んでほしくない」

訴えかけるイノリにルックは何も答えず、目を伏せる。その表情には、見えない涙がある。そんな気がする。

「お前はもう、一人なんだぞ。さぁ、真の紋章の破壊なんて馬鹿なことはやめて、降参してくれ!」

ヒューゴも、なるべく戦いたくないらしい。剣を構えず説得を試みる厭戦的な英雄の言葉に、ルックはようやくこちらを向いた。

「僕は最初から"一人"だったよ。この世界に生まれ落ちてから、ずっとね。君だってそうなるよ、炎の英雄ヒューゴ。大きな力と、英雄としての名声…それは必ずしも幸福でないことを、君もやがて知る。何なら銀の乙女と50年前の戦いの立役者に聞いてみたらどうだい」

ルックは不気味なほど清々しい声で語った。
大きな力と英雄としての名声が必ずしも幸福ではない。それを既に知っているゲドとクリスは、返答に窮するかと思いきや、すぐさま言い返した。

「確かに力や名声は幸福ではないと、俺も思っていた。しかし、守るべきもののために力を使えることが、不幸だとは思わない」

「私達には、信頼できる仲間がいる。そして、なすべきことがある。ルック…お前とは、違う!」

気迫の溢れる二人の言葉をルックは「綺麗事だ」と一蹴し、ヒューゴの右手を見つめる。

「ヒューゴ…真なる火の紋章にも、それを継承してきた者達の記憶が残っている筈だよ。かつての炎の英雄は幸福だったかい?」
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