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□Level.18 ねがい
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長い歴史を持つ大国、ハルモニア神聖国首都クリスタルバレーにある、円の宮殿。
首都の象徴にして政治の中枢でもあるそこは名の示す通り、秩序を形象化させた形、円を基調とした宮殿である。
壁や天井は壮麗な硝子張りにされていて、まるで国の汚い部分をひた隠しにするように、神聖さを誇示している。
神官将ササライは、ゼクセン・グラスランドの争いの調査に派遣したナッシュから報告を聞き、悪い想像に駆られていた。
謀反の可能性。それから、彼自身の宿す真なる土の紋章を奪われる可能性。
「それでは…やはり、あの男の狙いは…」
「はい。五行の紋章を、ハルモニアのためではなく自らの手に入れるために動いていると思われます」
ササライの前に恭しく跪くナッシュは、侵攻前のリザードクランやカラヤクランでの騒動も、軍を動かすためにその男が引き起こした可能性が高いとも語る。
「それならば、すぐにも………誰だ!!」
静かなる宮殿内に、ササライの大きな声が響き渡った。彼とナッシュの二人しかいない筈の場所に、他の人間の気配がある。
侵入者。それも、強い魔力を持つ人間だ。
「やっと気付いたのかい。随分と、無用心だね」
毒を吐きながらも素直に、侵入者は警戒する二人の前に姿を現した。
それは二人が話に出したばかりの、名も顔も明かさず神官将の地位を手に入れた男。
以前この宮殿で、彼にその地位を授ける儀式を取り仕切ったのは、ササライである。
ササライはその時のことを覚えていたが、今の彼の姿はその記憶とは異なっていた。
今の彼は仮面を外し、顔を晒している。
「これは…ササライ様の…」
ナッシュは二人の神官将を見比べて、目を見張った。仮面の神官将の素顔。それが、ササライと瓜二つだったから。
その顔を見ても、ナッシュは仮面の神官将の名を知ることが出来ない。
だが、どうやらササライは、自分と同じ顔をした彼に心当たりがあるようだった。
「お…お前は…15年前に……」
「あぁ、そうさ。その15年間を無為に過ごしたようだね、兄さん」
「ここは、人払いをしてあった筈だ。神殿のしきたりを破るつもりか?」
兄さんと呼ばれたことに戸惑うササライに代わり、ナッシュが毅然として詰問する。
「それに従う理由もなくなったんでね。兄さん、あなたの持っている“真の土の紋章”を渡して貰うよ。最後にしようと思っていたんだけど、計画が狂ってね」
「何を言うんだ!お前は何者だ!!」
15年前のデュナン統一戦争の時も、ササライは戦場で出会った彼に同じ問いをした。
しかし彼は答えず、その後、ササライの部隊は壊滅に追い込まれた。真なる風の紋章の継承者である彼、ルックの力によって。
「僕が何者か?良いよ。教えてあげる。僕とあなたが何者なのか、教えてあげるよ」
「僕と君が…?」
「あぁ…そうさ。僕らが何者なのかね」
ルックは、うっすら嘲笑しながら言った。
彼の虚しい笑みは、ササライに向けたものでもあり、己に向けたものでもあった。