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□Level.17 なみだ
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イノリはここ最近はビュッデヒュッケ城で平穏な、そして怠惰な日々を送っていた。
今日もそんな一日を過ごすことになるだろうと、思っていたのだが。それもついに、終わりを迎えることとなる。
「ねぇシーザー、『知らせ』って何なの?気になるから早く教えてよ」
「ヒューゴが来るまで待ってくれ。あのビッキーとかいう魔法使いは、一体ヒューゴをどこまで飛ばしやがったんだ?」
天然ボケな魔法少女ビッキー。彼女は、広間へ行こうとするヒューゴが通りかかった瞬間、くしゃみをした。何という災難か。
ヒューゴは彼女のくしゃみで、どこかへテレポートさせられてしまったのだ。
ルシアが落ち着かないように見えるのは、きっと気のせいではないだろう。
知らせがあるからと広間に呼ばれたイノリは、早くこの場から退散したかった。
シーザー、アップル、ルシア、デュパ、サロメ、ゲドといった、連合軍で重きをなす人物達が顔を合わせる場。
そこに自分が混じっているのは場違いだと自覚して、とにかく肩身が狭いのだ。
「じゃあ、せめて良い知らせか悪い知らせかくらいは教え……」
イノリが言いかけた時、ヒューゴはようやく広間にやってきた。急いでここまで来たらしく、彼の息は少し荒くなっていた。
「お、やっと来たな、ヒューゴ。待ちくたびれたぜ」
「済まない。…何かあったのか?」
「ジンバからの知らせがついたのさ」
彼の母親は毅然として答える。先程までは心配そうな顔をしていたのだが、それを彼に悟らせたくないのだろう。
「ジンバ?それなら、さっき大空洞で姿を見たぞ。高速路に入っていった」
どうやらヒューゴはビッキーのくしゃみで大空洞まで飛ばされていたらしい。
彼の目撃証言を聞き、シーザーの頭にある確信が生まれる。
「じゃあ、この知らせは本当なんだな」
「それが、どうかしたのか?」
「問題はその内容さ。真の火の紋章に続き、真の水の紋章の封印も解かれようとしている。紋章は、高速路から続くシンダルの遺跡にある」
シーザーは、ジンバが書いたと思われる地図を、広げて見せた。
高速路の扉の向こうの、シンダル遺跡の入り組んだ地形。今までずっと誰も立ち入ることの出来なかった場所の、詳細な地図。
ヒューゴが「どうしてジンバが」と呟くのを聞いて、イノリは思い出した。
ジンバの正体。そして未来。
焦燥の波が、イノリを飲み込む。
…ジンバはこの後………死んでしまう。