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□Level.5 くしゃみ
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「おーい、イノリー!!ご飯だよーー!!!!」
アイラの溌剌とした声が狭い部屋に響く。
…まだ10分しか寝てないのに。
と、思ったら2時間も眠りこけていたらしく、仮眠とは恐ろしいものだ、とイノリは思い知らされた。
自分の身体は10分と感じていても、実際に目を開けてみると既に陽が落ちている。
寝ぼけ眼のイノリはアイラに手を引かれ、客室と同様に質素な食堂へ向かった。
「お、イノリ。凄いじゃねえか、あいつに勝つなんて」
「…ら、楽勝だったよ、あれくらい!エースも私と勝負してみる?」
軽いノリで賛辞を送るエースに、イノリはそのままのノリで返す。
…本当はズルにズルを重ねて掴んだ勝利だけど。
自身の情けなさに軽く溜め息をつきながら、イノリは用意された席に着くのだった。
皆揃って賑やかに食事を取るのは、親交を深める良い機会だ。
と言っても、これから行動を共にしていくのだから、一緒に食事を取るくらい当たり前のことだろうが。
案の定、出された料理も質素なものだったが、楽しく談笑しながら食べていると、美味しく感じるから不思議だ。
和気藹々とした食事のひととき。
それはイノリの心に安らぎを与えた。
ひとつの獣の肉を取り合うエースとジョーカーの姿に、皆が笑う。
それ自体が微笑ましい光景だ。
これで戦いが無ければ、本当に幸せな場面だろう。
ふと起こった感慨。自らの思いそのものに、イノリははっとした。
…あれ…そういえば、戦いって……何?
急に身体が凍り付くような感覚が、イノリを襲う。同時に思い出した、気付かないフリをして無視していたこと。
戦う、ということ。
最初は、イノリはただビュッデヒュッケ城でのんびり暮らす気満々だった。
だが今はこうして十二小隊に入れてもらって、ゲド達に同行している。
つまり後に英雄戦争に参加し、前線でイノリ自身も剣を振るうという事。
更に簡潔に言うと、だ。
戦いで死ぬ可能性もある。
戦慄が、イノリの身体を駆け巡った。