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□Level.4 てあわせ
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「一丁上がり…っと」
武器を失った兵士を見下ろし、勝利の余裕からイノリは髪を掻き上げた。
…決まった。
でも、何か忘れている気がする。
一体、何を…。
「イノリ、後ろ!」
他の兵と剣を交えているクイーンが叫ぶ。
「え?……ッ!」
勝って兜の緒を締めよ、という言葉がイノリの頭を掠めた。
忘れていた何か。イノリが振り返ると、そこにいたのは大きな虫。
現実的に考えればあり得ない程巨大な虫を目の前にして、叫ばずにいられる程、イノリの肝は据わってはいなかった。
「い…いやあああぁぁっ!!!!」
イノリは誰もが耳を塞ぎたくなる程の大声で叫び、涙目になりながら剣を滅茶苦茶に振り回して虫を追い払おうとする。
「…何事だい?」
イノリの大声に、不快そうな男の声が放たれた。
直後、兵士達の攻撃がぴたりと止む。
落ち着いたその言い方から、声の主はイノリ達を村に入れまいと奮闘している兵士ではないと分かる。事情を知らない者だ。
では、それは一体誰なのか。
イノリは彼の姿を見て、身を硬くした。
騒ぎを聞き付けて現れたのは、奇妙な仮面を被り素顔を隠している小柄な男だった。
…知ってる。仮面の神官将。
英雄戦争を引き起こした張本人。
真の風の紋章の宿主で、物語のラスボス。
名前は、ルック。
この時点でそれを知っているのは、ここではきっと彼自身とイノリだけだろう。
うっかり名前を呼んでしまわないように、イノリは唇を噛み締めた。
「これは神官将様…お見苦しい所を…」
兵士達はルックの前に素早く整列し、ゲドやクイーンも、粗相のないようにと既に剣を鞘に収めていた。
イノリもそれに倣い、剣を眩しく煌めかせて手から消す。
その様子を見たルックは驚きに目を見開いたが、勿論仮面のお陰で誰も気付かない。
「…珍しい剣だな」
ルックが言葉を掛けた相手が自分だと気付くのに、イノリは暫しの時間を要した。
まさか彼に話し掛けられるとは思わず、イノリは慌てて言葉を探し、
「そ、そんな事はございませんですよ!」
極度の緊張のせいで、変な敬語で応答してしまった。