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□Level.3 たびだち
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「ええぇぇーい!!」

掛け声と共に、木刀が空を斬る。
上から下へ、一振り。
袈裟懸けに、二振り。

イノリがそんな動作を続けてから、小一時間くらい経とうとしていた。

「うーん…太刀筋は悪くないが、力みすぎだな。もっと、こう………」

イノリは戦いのベテランらしい傭兵風情の武術指南の師範に、剣の使い方を指導してもらっていた。
ゲーム中ではお金ではなくスキルポイントを消費して利用する施設だが、実際当然そんなメタなことはない。
しかし、傭兵の街ということもあってか、タダで指導してくれるらしい。有り難いし、お金を消費しないという意味ではゲームと同じだった。


イノリは、今から旅立とうとしている。
この先、何が起こるか分からない。
ならばせめて自分の身を守るために、剣の使い方を学んでおいた方が良いだろう、と考えたのだった。
武器を持っていても、それを扱える技量がなければ、宝の持ち腐れとなってしまう。
それどころか命の危険に晒されることも十分有り得る。

強くなりたいと願いながら。ド素人のイノリはひたすら稽古に励んでいた。



「よし、ここまでだ!姉さんだいぶ上手くなったよ。お疲れさん」

師範は、木刀を振り続けて汗だくになったイノリを褒め、稽古の終了を告げる。

「はぁ、はぁ、疲れた…。少しは、強くなれたかな?」

イノリは木刀を地面に突き立て、汗を拭う。疲れがあっても気分は爽快だった。

「鍛練を怠らなければまだまだ伸びるはずだ。頑張れよ!」

「はい、ありがとうございました!」

剣の扱いを手取り足取り指導してくれた師範にイノリは元気良く頭を下げ、指南所を後にする。

…疲れて汗もかいたことだし、シャワーでも浴びてからグラスランドを目指そう。

少しだけ強くなった自分と、冒険の予感にわくわくしながら、イノリは宿に戻った。
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