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□Level.1 はじまり
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自室のベッドの上にいる、死んだ魚のような目をした少女。
何をするでもなく、無意味に、ただぼうっと寝転んでいる。

「…はぁ……退屈。何か面白い事、ないかな…」

少女は暇な時間に耐えかね、ぼそっと愚痴るように、地味な壁紙の天井に向かって話し掛けた。
もしも返事をしたならば、どれほど面白いことだろうか。
しかし、天井が返事をする訳もなく、それはでかでかと少女の前に広がっている。

…私はイノリ。 どこにでも居るようなごく一般的で平凡な人間だ。
平凡な家庭。平凡な毎日。
日々のルーチンをこなし、休日は適当に過ごす。
それらに満足していない訳ではない。
かといって、不満がない訳でもない。

「つまんないなぁ…」

イノリの主な不満はそれである。
だが、嘆いても仕方のない事だろう、と心の片隅ではきちんと理解していた。
どんな時代のどんな家庭に生まれるかなど、自分で決められるものではない。

スリリングで毎日がハラハラドキドキ、なんていうのは、フィクションの世界だ。物語の中だけだ。
それに比べればイノリは、昨日も今日もほぼ変わらない生活を送っている。
明日もほぼ変わらないだろう。
もし転機が訪れたとしても、物語のようにファンタジー的だったり、ドラマチックな事が起こる訳はない。

「…はぁ」

と、イノリは大きくため息を吐くも、そのため息自体が馬鹿馬鹿しい事なのである。
下らないことを考えるのはやめよう、とイノリは自分に言い聞かせ、ベッドから勢いよく飛び降りた。




「……………ん?」
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