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□Level.16 かんぱい
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広漠とした草原にはためく青い軍旗。
ハルモニア軍は、ゼクセン・グラスランド連合軍を叩くため尚も陣を構えており、じわじわとゼクセン方面に前進していた。

「あの城を落とせばゼクセンの首都、ビネ・デル・ゼクセまでは一直線でございます」

ハルモニア神聖国神官将ササライの直属の部下にして参謀のディオス。
彼は勝ち続きの戦局にあぐらをかきながら、ブラス城を正視していた。

「紋章探しをするだけなら、ここまでする必要もなかろうが…」

軍隊の先頭で、ササライは呟く。
ハルモニア軍全体の士気は高いが、彼自身は進軍に意欲が薄いようだった。
そんな生温い性格の上司を、粛々と諌める赤毛の男。

「グラスランドに住む者は、かつてハルモニアに“勝った”と思い込んでいます。彼らに、真実を知らしめる必要があります。グラスランドと、その周辺の国を落としてこの地をハルモニアに組み込むことが肝要です」

アルベルトは、ディオスのように戦う前から勝利を確信して肩の力を抜く、とまではいかないが、いくらか余裕を持っていた。

「分かっている。ヒクサク様からの直々の命だからね」

ササライは僅かに表情を引き締める。

「しかし、静かですねぇ。これは…奴ら、諦めたかな?」

「ふん、そうでもないらしいぞ」

殺戮を求めて戦いに与する悪鬼ユーバーは、目深に被った黒い帽子をくいと上げ、口元を怪しく歪ませていた。









捲土重来、巻き返しの時が来た。
ブラス城の堅固な門の扉が厳かに開かれ、その中から溢れだすのは、ゼクセン・グラスランド連合軍。
戦いへ続く道を歩みながら、イノリは四方を見る。どの者にも気力が溢れていた。

種族。肌の色。格好。皆、異なっている。
それでも、グラスランドの者もゼクセンの者も、心は一つだった。
意気軒昂とした空気。それは勝利の気配。
イノリは再び戦うことに緊張があったが、それを上回る興奮が胸を支配していた。

引き寄せ合うように前進し、距離の狭められる両軍。
連合軍のリーダーは、敵軍の先頭が見える距離まで前進すると、軍を停止させた。そして叫んだ。

「ハルモニアの長に、話が聞きたい!!」

連合軍を率い、こちらの陣頭に立つのは、言うまでもなくヒューゴである。
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