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□Level.14 おもい
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『これで、真の火の紋章も…。なかなか、上手くいかないものだな…』

…これは、ルックの声…?

『しかし、真の火の紋章に新たな継承者が生まれたことにより、ソルの名によって施された封印は弱まっています。アルマ・キナンの封印も失われた今なら…』

…今度はセラの声だ。でも、破壊者達は撤退したはず…。

『高速路の封印が解けるかもしれないな。異世の者も…手に入れたも同然だ。今は泳がせておいた方が、面白いだろうけど』

…私を手に入れたも同然?泳がせる?







「はぁ!?」

イノリはがばっと跳ね起きた。
そして上体を起こして辺りを見渡す。
目の前にいるのは破壊者達ではなく、正真正銘、気心の知れた仲間達だった。

「…いきなり起きるんじゃないよ。驚くじゃないか」

額が冷たいと思うと、クイーンが水で濡らしたタオルで寝汗を拭ってくれていた。
そのひんやりした感触が、イノリを冷静にさせてくれた。

「あぁ……嫌な夢見た…」

「でも、それで起きれたなら良かったよ。このままずうっと目を覚まさないよりは、絶対にマシだもん!」

「確かにね。…で、ここはどこ?何でここにいるの?ゲドもヒューゴもクリスさんも、無事だよね?」

イノリは目を覚ました途端に、次々と質問を浴びせた。

「ここはチシャの村の宿屋。お前さんが倒れているうちに、運ばれたんじゃ。そして、この村は葡萄酒は美味くての…」

深く息を吸い込んでみると、ジョーカーの言う通り、葡萄酒の芳醇な香りが辺りを満たしているのが鼻で感じ取れた。

「言われてみればいい匂いが…ってそうじゃなくて!…さっきからゲドの姿が見えないけど…どこにいるの?無事なの!?」

嫌な想像をしてそわそわするイノリ。
その後ろ側から、すっかり聞き慣れた声が降ってきた。

「…俺はここにいる」

彼の姿が見えなかったのは、ただイノリの視界に入らない場所にいたというだけらしい。
早とちりを恥じながら、イノリは椅子に腰掛けている彼の方へ顔を向けた。

「よ、良かったぁ…。怪我とか、ない?」

「あぁ。…それよりもまず、自分の心配をしたらどうなんだ?」

ノリ突っ込みをする元気はあるイノリだが、倒れる以前の出来事を考えると、確かに不安が頭をもたげた。
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