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□Level.13 つどい
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ビュッデヒュッケ城を発ってから、結構な日にちが経過している。それでもイノリ達は相変わらず歩き続けていた。
グラスランドの東に位置するシックスクランの一つ、チシャの村。
つい先日ハルモニアの侵攻を受けたとは思えない程のどかなチシャの村の近くに、炎の英雄が隠居する洞窟があるという。
「それが、この洞窟って訳……。本当に、ここで合ってるの?」
緑のない、切り立った岩肌の山の山腹。
不思議なことに昼間でも薄暗く、肝試しには丁度いいが、人が好んで寄り付くような場所ではなさそうだ。
その山の、注意しないと見落としてしまいそうな岩肌の陰に、大人が問題なく入れる大きさの横穴がぽっかりと空いていた。
「………………」
黙って洞窟の中へ踏み出すゲド。
それがイノリへの返事のようだ。
謎だらけの隊長だが、この中に彼を否定する者は一人もおらず、皆彼を追って洞窟の闇の中へ進む。
身震いするような温度差と暗さ。
洞窟の中は外以上に怪しさが漂っていた。
何故か松明係にされたイノリが炎を揺らめかせて辺りを照らしても、染み付いた闇が晴れたような感じはあまりしない。
「…うわ、真っ暗。どのくらい歩けば一番奥に着くのか、全然想像つかないね」
視界の両端には、松明の炎に浮かび上がった岩壁が視認出来るが、前方には距離感の測れない漆黒の闇が広がるばかり。
「へぇ、こんな所に炎の英雄様がいるっていうんですか?随分と変わり者のようで」
「まぁ、街中で慎ましく暮らしているよりは、雰囲気があるかもしれんな」
気分の沈みそうな洞窟に入っても、ユーモアを忘れずに雑談するエースとジョーカーの声が反響した。
「炎の英雄って、年を取らないって言うんだろう?一体、いくつ位なんだろうね?」
果てしない闇をじっと見つめ、どこか切ない雰囲気を含んだ声で漏らすクイーンを、エースは間髪入れず茶化す。
「あーーん?何だ、気になるか?若い男なら、モノにしようって腹かい?………痛ててててて!!!!」
わざと品位に欠ける冗談を言ったエースの顔が、クイーンの強烈なお仕置きを受けて一気に歪んでいった。
彼女はまるで踏み潰すかのような勢いでエースの足を思いきり踏みつけたのだ。
「ゲス…………」
眉をつり上げたクイーンは痛みに悶えるエースに静かに吐き捨て、つかつかと奥へ進んでいった。
不機嫌そうなクイーンと、彼女に踏まれた足を引き摺って歩くエースのやりとりに、疑問を持つアイラ。
「モノにするってなんだ?」
近くにいるジャックに尋ねるが、
「い、行くぞ…………」
彼は純粋なアイラのために何も答えず、歩調を速めて奥へと進んでいった。