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□Level.12 じゆう
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翌朝になると、城内の雰囲気はどことなく張り詰めていた。
普段はのんびりした城だが、今日に限っては仕方ないと言えるだろう。
何故なら、いよいよ今日、トーマス達の戦いが始まるのだから。
「本当に、お城の中に一日寝泊まりしてもバレなかったね…」
その無用心さに呆れつつも感謝しながら、イノリ達は寝室として勝手に借りた医務室から出る。
「大丈夫。城の皆は、入口の所に集まっているよ」
グラスランドの自然の中で育ったお陰か、視力の良いアイラは玄関をほんの少し開け、遠くの人影を確認する。
「じゃあ、そろそろ行きましょうか」
「具体的に、トーマス達にどうやって協力するの?」
いかにも軽く片付けられる仕事であるかのように言うクイーンに、イノリは尋ねる。
「評議会が差し向けてくる兵を妨害する。勿論、城の奴らにはバレないようにね」
「あんまりコソコソしたくないけど…仕方ないよね。皆、頑張ろう!」
イノリは拳を握り締めて気合を入れ、トーマス達を援護するため、仲間と共に館の外へと出ていった。
イノリ達が城門付近で隠れてしばらく待ち伏せていると、評議会の軍隊と交戦し、退却するトーマス達が戻ってきた。
トーマスは城門に到着すると一旦足を止め、きちんと全員ついて来ているか確めるように振り返る。
「じゃあ、作戦通りに館まで戻るよ、皆遅れないでね」
「はーーい」
焦った顔で指示するトーマスに城の倉庫番を務めるコボルトのムトが陽気な返事をすると、彼らは城の本館に向かって全速力で走っていく。
この戦いの目的は敵部隊を倒すのではなく、どうやら時間を稼ぐためのものらしい。
トーマス達が走り抜けていった城門は、再び静寂を取り戻したかと思うと、またすぐに後方から足音が迫ってきた。
「く、逃げたぞ、追え!追え!!」
何とかここまでトーマス達を追って走ってきた体力のなさそうな評議会議員が、十数秒前までトーマス達がいた城門で息を整えながら後続のゼクセン警士達に命令する。
「はっ!」
議員の命令に従い、警士達は鉄製の鎧をがしゃがしゃ音を立てながら、逃げるトーマス達の後ろ姿を追おうとするが、
「待ちなさいっ!」
それはイノリの声に阻まれた。
「さぁて、ここまでだ」
突然脇から現れて道を塞ぐイノリ、エース、ジョーカーに、当然警士達はトーマス達の追跡を中止せざるを得なかった。
「な、何者だ??」
「何者って訳でもないんだけどね。女子供だらけが相手じゃ、ちょっと不公平だろ」
「ハンデじゃな」
「ちょっと、私達と遊ぼうよ」
三人が武器を構えると、警士達も余裕そうに笑みながら武器を構えた。
きっとたったの三人くらい軽く捻ってやろう、とでも思ったのだろう。
だが、そこにゲド、クイーン、ジャック、アイラも物陰から飛び出して加わると、警士達の余裕の表情も崩れていく。
「行くぞ」
ゲドの一言により、イノリ達と警士達との戦闘が始まった。