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□Level.10 さいかい
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ビネ・デル・ゼクセの宿屋は、黄昏時から芳醇な酒の香りを漂わせていた。




「皆、久しぶりだね…」

酒を酌む仲間達を、見るからに不機嫌そうな視線で刺すイノリ。

「おや、お帰り。心配したよ、二人とも野垂れ死んでるんじゃないかって」

「今飲み始めたばかりだというのに…もう少し到着が遅ければのう…」

冗談を言いながら、グラスに注がれた酒を一気に呷るクイーンとジョーカー。
ほぼ同時に勢い良くテーブルに叩き付けられたグラスは、二つとも空っぽになった。





グラスランドとゼクセンとの国境付近に位置するゼクセン騎士団の本拠地、ブラス城。
仲間達との合流地点である、ブラス城に併設された宿屋を覗いても、そこは既にもぬけの殻であった。

そこで「言付けを預かっている」と宿屋の女将に渡された小さな紙切れ。
それに乱筆で記されていたのは、仲間達がイノリとゲドが追い付くのを待たず、先にビネ・デル・ゼクセへ発つという旨だった。

先に出発するのは別に構わないが、その理由にはイノリは怒るしかなかった。
急ぎ仲間に追い付くために宿屋を出ようとすると、女将に引きつった笑顔で突き付けられたもう一枚の紙。
それは結構な金額の勘定書。
「あなた方が払ってくれるんですよね?」と女将に問い掛けられた時は二人して溜め息が出た。

だらしない仲間にいち早く文句が言いたいという一心で、きっちり勘定書に書かれた金額を払ってブラス城を発ち、今に至る。




「酒代をツケて逃げるなんて、ひどい!」

「いやぁ…こいつらが馬鹿みてぇに飲むもんだから…まぁ…二人がたんまり金を稼いで帰ってくるって信じてたんだよ」

イノリに睨まれる会計係のエースは、その機嫌を取ろうと愛想笑いで言い訳するも、逆効果だった。

「そんな事言って…色々と大変だったんだから…!」

「……………お疲れ様」

水滴の付いたオレンジジュースのグラスをかき混ぜながら、さりげなく労いの言葉を掛けてくれるジャック。
他の隊員ももう少し思い遣りが必要なのではないだろうか。

「ありがとう………って、あれ?アイラ、どうかしたの?」

ジャックと向かい合ってテーブルに頬杖をついているアイラが、どこかしょぼくれているように見え、イノリは声を掛けた。
何か違和感を感じると思ったら、彼女の着ている服はカラヤの民族衣装から下ろし立ての洋服になっていた。
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