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□Level.8 つばさ
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あんな事が起きるなどと、予想出来る筈がなかった。否、予想出来たとしても避けられなかったのかもしれない。
あれが、運命だというのなら。

格好つけて説明してみたが、簡単に言えば、ゲドの無表情に唖然の色が混じってしまうような事が、これから起きるのだ。
最も驚くことになるのはイノリだが。









手が不自由な状態で立ち上がるのは、思いの外難しい。
イノリが脱出を試みようと、ドアの前までバランスを崩しそうになりながら歩き、顎でノブを捻ろうとしたが、扉はびくともしない。
捕えた人間を逃がさないために外側から鍵を掛けるのは、基本である。

夜空の覗く窓には格子が取り付けられ、出入りが出来ないようになっている。
黄金に塗られた格子も、刑事施設にありそうな厳つい鉄格子よりは幾分かマシだ。

それらの点から、今イノリとゲドの居る部屋は、人を閉じ込めておくためのものだと分かる。
人が暮らす家にそんな部屋があるのは、やはり趣味が悪いとしか言いようがない。


「…ふんっ!…はっ!」

正面の壁の全面に貼り付けられた鏡に映るイノリの姿は、気を付けの姿勢で上半身に縄を巻き付け厳重に縛られた、みっともない姿。
どんなに身を捩っても力んでも、解けない。少しの隙もない程強く縛られている。
そういう時は他人の力を借りるべきなのだろうが、それは無理な話だ。

「……………」

隣にいる男もイノリと同じように身体の自由を奪われているのでは、意味がない。
兵に囲まれた時の僅かに狼狽えたような表情は既になく、彼はただ黙り込んでいる。

「このまま捕まってたら……私達、どうなっちゃうんだろう…」

体力を浪費する無駄な抵抗を一旦諦め、ぼそりと呟くイノリ。

「この程度の罪、大した事はないだろう」

腰を据えているゲドは逃げ出す事に無関心どころか、裁きを受けるつもりのようだ。

「でも…やっぱり罪人にはなりたくない!逃げる方法を考えようよ…」

…人生まだまだこれからだというのに、前科持ちは嫌だ。絶対。
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