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□Level.5 くしゃみ
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「あぁ…疲れた……」

剣先を乱暴に引き摺りながら、よたよたした足取りで宿の客室内に入るイノリ。

この小さな宿屋でも、ルビークの経済的な事情が垣間見れた。
部屋の灯りは少なく、ぼんやりと明るい、悪く言えば薄暗い部屋に、質素なテーブルと薄汚れたベッド。

この部屋はアイラ、クイーン、イノリの三人部屋らしい。
誰かと一緒の部屋に泊まるというのは、イノリにとっては久しぶりだった。女同士で旅行に来たかのような、なんとなく華やいだ雰囲気。
しかしイノリは、残念ながらそれを楽しむ余裕もない程に疲れてしまった。剣を消し、飛び跳ねる気も起きない固いベッドに倒れ込む。

「お帰り、イノリ。あんた…どこに行ってたんだい?」

イノリの疲れ切った表情を見てクイーンが尋ねるも、イノリは怠そうにして答えない。

「イノリは、ケンカしてたんだよ!」

疲れているイノリの代わりに、アイラが興奮した様子でクイーンの質問に答える。
簡潔すぎるアイラの説明にクイーンは困惑したが、彼女はそれ以上質問を重ねる気は起きなかったようだ。

さっきは大勢の人の前だから恥をかかないように、と頑張っていたイノリだが、人が居なくなった途端、身体にどっと疲れを感じていた。

この疲労は、まだ勝手の分からない魔法を使ったせいだろうか、と疑うイノリ。

魔法が使える、と浮かれても、それはこの世界においては何ら特別な能力ではない。
寧ろ一般化しているものだ。
ゲドやジョーカーに比べ、あの程度の魔法で疲れてしまうイノリは、まだまだ一人前とは言い難い。

「…強くならなきゃ……駄目だよね…?」

イノリは枕に顔を埋めながらとりあえず自分の能力について気にしてみるも、今は言葉通り気にするだけだ。疲れて動きたくなかった。

…後で魔法も特訓しよう。……きっと。

「まぁいいか…私ちょっと寝るね……」

欠伸をしながら聞く者も眠くさせそうな声で言い、イノリは目を閉じる。

「じゃあ、夕飯の時になったら起こすよ」

「んー…」

イノリはだらしない返事をして、夢の世界に片足を突っ込むのだった。


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