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□Level.4 てあわせ
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再びの山歩き。しかし今度は一人じゃない。
一行の目の前にようやく現われた目的地。
それは小さな集落だった。

「ここが、ルビークねぇ。虫使い達の村なんだろう?」

歩きながらエースは、少々怠そうに問う。

「そうだな。その技があるから、生き残れた部族だ」

答えたのは、チームの最古参にして知識人でもあるジョーカーだ。

「虫使い?」

エースとジョーカーの会話の聞き慣れない言葉をアイラが復唱する。次に説明したのは横で会話を聞いていたクイーンだった。

「あぁ。このルビークに住む、カーナー族は元々虫を操る術を持っていた。だから、ハルモニアに征服された後も生きる事を許されたんだ」

「生きる事を許された?」

クイーンの説明もよく理解出来ず、またも鸚鵡返しに聞くアイラ。
そこに突然、

「待て!!」

険しい声が響いた。それはどう考えても、イノリ達の村への進入を拒む声である。
しかし、人の姿はない。
やけに鮮明だったが、きっと空耳だろう。そう都合よく解釈したイノリの足は、止まらなかった。

「こら!止まれ、怪しい奴らめ!!」

再度、険しい声が響いた。空耳などではなく、村の兵士が大声で叫んだのだろう。
だが、やはり人の姿は見当たらない。

「ちょっと!怪しいなんて勝手に決め付けないでよっ!」

ようやく言われた通りに立ち止まったイノリは、姿の見えない声の主に怯むことなく、強気に言い返した。

すると姿を現したのは、ばたばたと羽音を立てて飛ぶ大きな虫と、それに乗った虫使いの青年だった。
警戒を宿す端正な容貌に、短い黒髪。
その外見のルビークの兵士といえば、イノリには心当たりがあった。
名はフランツ。ルビークを大切に想い、自由を取り戻すために尽力する青年である。
彼がフランツならば、彼が乗っている巨大な虫は、ルビで間違いないだろう。

「う…!お、大きな虫が…」

イノリの表情が、一瞬で氷のように冷えて固まった。半透明の羽や毒々しい程に鮮やかな色の模様を視覚が拒絶する。

「落ち着け、イノリ。…大丈夫だ」

さっきの勇ましい態度とは一変してイノリは情けなくうろたえ、たまたま後ろにいたゲドの背中に隠れていた。

「怪しい奴は、排除する!!」

踏み潰しても死なない、というよりもこちらが踏み潰されそうな程の大きさの虫のルビが、イノリ達に向かって突進してくる。
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