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□Level.22 さけび
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出陣のときが、刻一刻と迫っていた。
いよいよ戦の準備が終わり、慌ただしく駆け回っていた兵士達は乱れなくずらりと整列していた。種族も装備も多様で統一感には欠けるが、戦いに懸ける想いは同じ。
グラスランドとゼクセンの人間が一つになったこの光景は、壮観の一言に尽きる。

隊列の正面に立っているシーザーは、戦いに参加する者達がそこに全員揃っていることを確認し、声を張り上げる。

「これより、このグラスランドとゼクセン連邦に害を成す邪悪な儀式の行われている遺跡へと出陣する」

最初こそまだ十代という若さゆえに軽んじられていた彼だったが、今や軍師としての底知れぬ才能を認めない者などおらず、誰もが真剣に彼の声に耳を凝らしていた。

「そこでは、魔獣の類が待っていると予想されるが、これを打ち破る必要がある。……この戦いに勝つことだけが、この土地を救う唯一の方法である!」

シーザーが各勢力の代表者達に目配せすると、まず最初に英雄の母たるルシアが姿勢を正し、鋭く叫ぶ。

「この土地に住む全ての人々と、全ての精霊のために、我らが命は戦いへと赴かん!!」

激励の言辞を言い終えたルシアは、かつての敵は何を述べるのかと、楽しみそうな視線をサロメに送る。彼は分かりづらいほどに微かな笑みを返すと、静かな気迫を言葉にのせた。

「我ら騎士団と、グラスランドの勇敢なる戦士達がその戦いを成し遂げることを、祈る」

「ここにいる全ての者の剣が集うことにより、打ち破れぬものはないと、信じよう!!」

リザードクランの族長デュパは人間のものより大きな口を開け、獣の咆哮の如き猛々しさで士気を煽る。
軍師はそれぞれの簡潔ながらも力強い宣言に、ご機嫌そうにうんうんと頷いた。
そして最後に、凛々しく唇を一文字に引き結んだヒューゴが前に進み出る。炎の英雄は、勇気ある者達一人一人の顔を脳裏に焼き付けるように見渡し、彼らに祈りを込めて胸に右手を当てた。

「この戦いが……これまで、起こったことの…全ての悲しみの…終焉となることを祈る。皆に…大いなる守りがあらんことを…」

彼はそこで一旦言葉を切り、ぐっと拳を握りしめて、息を深く吸い込んだ。まだ少年らしいあどけなさの残る表情は、より頼もしく。声音には、炎が宿る。

「行こう!!この地を守る戦いに!!!!」

シンプルな言葉に込められる、熱い想い。

勝利を、仲間を、信じられる。
同じ願いを胸に、ひとつになって戦える。
負ける気がしない。
誰もが、大きく響き渡るヒューゴの声に、心を燃えたぎらせた。
イノリは高ぶる気持ちを抑えきれず、先んじて剣を高く掲げ、叫んだ。

「我らに勝利を!!」

その高らかな声を皮切りに、倣って同じ勇ましい叫びが何百と被さる。

「「「我らに勝利を!!」」」

それぞれが掲げた武器は、陽光を映してきらりと閃き。極限まで高まったそれぞれの覇気は、鯨波の声となって空気を震わせた。
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