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□Level.22 さけび
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「俺は…いつも自由でよく笑うお前に、ソルの面影を感じて、羨んでいたのかもしれない。お前の自由さに心を救われていたし、未来を知りつつそれに抗おうとする強さに、励まされていた」

真っ直ぐな言葉。真っ直ぐな目。それを向けられているのが自分であるという事実に、イノリの心は温かな喜びに包み込まれる。イノリにはもう十分ゲドの想いは伝わっていたが、今日の彼はいつになく多弁であった。

「お前が来てから、俺は変わった気がする。色褪せて見えた世界が、彩りを取り戻したような……無為だと思っていた永き生に、再び価値を見出せた」

ゲドは普段感情をあまり表に出さないが、感情が欠落しているのではなく、溜め込んでいるだけ。「少し素直に」とは言ったが、これは「少し」どころではない。
立て板に水を流すように、躊躇いなく直情を晒す彼の潔さ。それがイノリには瀟洒なものに感じられて、どきどきした。

「お前がお前らしくあることを奪おうとするものがいるならば、守りたい。お前は時に自分を顧みず、他人のことを気にかける…だから俺は、そんなお前を守る剣となり盾となりたいと願う」

自分には勿体なすぎるゲドの披瀝の一字一句全てが、先程までイノリが噛み締めていた心の温かさを、じんわりと熱いものへ変えていく。
止め処なく溢れる想いに突き動かされるように、そしてゲドの想いを受け止めるように。イノリは彼の胸に身を預け、ぎゅっと抱き締めた。

「ゲドがいてくれたから、私は私らしくいられた!私……これからもあなたのそばにいたい。一緒に色んな場所に行きたい。同じものを見ていたい。いっぱい役に立ちたい。支えになりたい。…いつまでも、そばにいたいよ…!」

思うままに言葉を連ねるイノリの背中を、ゲドもまた、逞しい腕で包み込む。

「いつまでも、か…」

いつも冷静で凪いでいるはずのゲドの瞳は、儚いものを見るようにイノリの顔を映していた。
それもそのはず、普通の人間が彼といつまでも共にいることをどんなに願っても、それは叶わぬ夢でしかないのだ。
彼の胸に頬を寄せていたイノリは顔を上げ、惹かれて止まない男の精悍な顔立ちを仰ぎ見る。

「ここで突然だけど、お知らせがあります。いいお知らせと悪いお知らせ」

「お前は本当に自由すぎるな」

ロマンチックな空気をぶち破るイノリに、ゲドは軽く嘆息した。
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