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□Level.22 さけび
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イノリの吐露はまだ終わらない。
何故だろうか、彼には自分が今考えていることを知っていて欲しいという思いが芽生えて止まらなかった。
「この城にはね、かつてルックと共に戦っていた人が何人かいるの。私、その人達は…ルックが討つべき敵であるということをどう思ってるのかなって、考えちゃったの」
アップル、フッチ、ビッキー、ジーン、トウタ。かつてルックと共に戦っていた彼女らは、奇しくもゲーム内では集団戦闘に参加するメンバーである。
その設定がこの世界に反映されているのであれば、決戦前の差し迫った状況で準備に余念がないところだろう。一体どんな心境で、決戦の日を迎えるのだろうか。
「事情を知らなければ、正義感だけで戦えるかもしれないけど…彼が戦う理由を知ってるから、私は少し心苦しい。………私傭兵なのにね。よくないよね、こんなの」
「戦う者としてはな。しかし人間として当然の感情だろう。辛いなら、今回はお前は戦わなくても、」
部下を思い遣り、傭兵らしからぬ提案をしようとするゲドの言葉を、イノリは彼の口に人差し指を立てて遮った。
「ううん、戦うよ。確かに辛いけど、戦うことを迷っているわけじゃないの。グラスランドを守るためっていうのは当然だけど、私は……ルックを救うために、彼の運命を変えるために、戦う」
曇っていた表情はどこへ消えたやら、イノリの表情は力強く引き締まっている。
「……そうか」
ゲドはいつもの短い言葉で、イノリの意志を認めた。ややもすると、受け入れてくれたかどうか判断の難しい寡黙な彼の一言だが、イノリは自分の決意が伝わっているとすぐに分かった。何故なら彼は、とても穏やかな目をしていたから。
「あー、喋ったらスッキリしたよ」
「聞くだけならいつでも聞いてやるさ。素直である方がお前らしい。まだ、感情を抑えることを覚える必要はない」
「ゲドこそ、感情を隠す必要なんかないのに。最近はなんか分かりやすくなった気がするけど、まだまだ。思いっきり声を上げて笑ってるのとか見てみたいなあ」
いきなりゲドの脇腹をくすぐってみたらどうなるだろうか。思いついたものの実行する勇気はなく、イノリはただにやにやしながら、静かにため息を漏らす彼の横顔を眺めていた。
「それは自分でも想像ができんな。………だが、俺もお前に倣って、少し素直に言わせてもらうか」
「え?う、うん。どんとこいだ」
くるかお説教。ゲドの珍しい前置きが、無意識にイノリの姿勢を正させる。彼の言葉を待ち、息を呑み込む。