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□Level.22 さけび
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その後イノリは、武術指南所で教えを受けたり、他の者と剣を交えて腕比べをしてみたり、手強い魔物の出る場所へ出掛けたりと、剣技の修錬と研鑽に励んだ。
そして、日の暮れる頃。程よい疲労感と共に城へ戻り、先刻の呼び出しに従ってゲドの部屋を訪れていた。
無遠慮に他人のベッドに腰掛けたイノリは、身体を弾ませたり足をぶらぶらさせたりと落ち着きないが、ストレートに尋ねた。
「…で、私はどうしてあなたに呼び出されたの?」
「渡しておきたい物がある」
ゲドが呼び出した理由はイノリの予想の斜め上を行っており、思考が停止し反応が遅れる。
「………渡しておきたい物?」
皆目見当もつかず不思議そうにするイノリをよそに、椅子に腰掛けているゲドは懐から小さな革袋を取り出す。と、彼はそれを投げてよこした。
受け取ったイノリはその革袋をひっくり返して中の物を手の平に落とす。感触は硬く、軽い。
革袋をよけると、そこにゲドの言う「渡しておきたい物」が明らかになった。
「適当に投げるから何かと思ったら……これ、指輪…?」
人の指と丁度同じくらいの径の輪状の物。そんな形をした物を、イノリの頭では「指輪」という以外は思いつかなかった。
繊細な模様が施され、中央には蒼く透き通った石が嵌め込まれている。それをまじまじと見つめるイノリに、ゲドは淡々と説明する。
「特別な魔力の込められた物だ。身につけた者の『魔法による防御能力』を増幅させるらしい」
…リフレクトリング、かな?
イノリの記憶の引き出しから、一つの物が選び出される。それはゲーム内でも装備品として登場しており、魔法リフレクトのスキルを上昇させる効果を持つ。しかもレアアイテムであり、どこの店でも売っていない。
「…この指輪、貴重な物だよね。いいの?私がもらっちゃっても」
「俺が持っていてもさほど役に立たない。お前が使え。これの力を最も活かせるのは、防御魔法を得意とするお前だ」
ゲドの口からドライに吐き出された理由は、十分に納得できるものであった。しかも命令口調で言われてしまっては、イノリも受け取らざるをえない。否、そもそも折角の厚意を無下にするつもりなど毛頭ないのだが。
「分かった、ありがたく使わせてもらうね」
早速イノリはその指輪を装備しようとするが、どの指にはめるべきかと思案していた。はめるならば、剣を振り回すのに支障のない指にするのが望ましいと言えるだろう。