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□Level.21 そうそう
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「し、神官将様!?」

イノリの背中をクッション代わりに着地し、時間差で到着したササライに、衛兵達は武器を収めて一斉に敬礼をする。

「まさか、この女の言っていたことは…」

ササライの座布団にされているイノリに浴びせられる視線は、警戒から戸惑いへ、そして不服そうな受容へと変化していく。

「私の言葉が嘘じゃないってやっと信じてくれた?ところでササライ様、さっさとそこ、どいて…」

「貴様、神官将様に向かって何たる口の聞き方だ!身の程をわきまえろ!」

「まぁ、君達が僕に礼儀を重んじてくれるのは有り難いけど、そう熱くならないで。彼女は僕の友人だから」

ササライはイノリの背中から退くと、イノリを立ち上がらせて親しげに肩に手を置いた。衛兵一同、唖然。イノリは得意満面である。

「し…失礼しました!ご無礼をお許し下さい!」

「こういう扱いされるの慣れてるんで。別に気にしてないから、大丈夫」

「『異世の鍵』は西のクロッツェオ教会にあるから。お互い用事が済んだら、またここで落ち合おう」

クロッツェオ教会。聞き覚えのあるようなないような名前を小さく復唱した後、イノリはしゃきっと一礼する。

「分かりました。帰りもしっかりお送りしますよ」

「よろしく頼む。じゃあ僕は報告があるから、失礼するよ」

ササライはひらりと手を振り、奥へと消えていく。彼がゆったりと歩く姿は、気品があって神聖な宮殿に馴染んでいた。
対して自分がここにいることを場違いだと自覚しているイノリは、衛兵に道を尋ねつつ足早に市街を目指すのだった。




光射す所には影が落ちる。秩序が保たれ活気にあふれた街も、中心部から離れると、裏の顔を覗かせ始めた。
クロッツェオ教会があるという西地区を目指して歩いているうちに、イノリは無法地帯のスラムへと足を踏み入れていた。
腐敗臭のするゴミの山を漁る人々は、その手を止めてイノリを虚ろな目で見るだけだ。
てっきり徒党を組んで襲い掛かってくるかと気を張っていたが、高級な衣服を着ている訳でもなく手ぶらの丸腰状態であることから、金品を持ってないと判断されたのだろう。
なるべく空気を吸い込まないようにとイノリは呼吸を浅くし、大きな歩幅で整備されていない道を進んでいく。

しばらく歩いてスラム化した地区を抜けると、悪臭も人の姿も消え、足元は所々剥げた敷石の道に変わった。景観を意識した舗装の道路は、それなりの景観の場所に、つまり教会に繋がっているはずだ。
そんな予想を持ってイノリが導かれた場所は、予想通りであり予想外でもあった。

「こ、ここがクロッツェオ教会…なの?」
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