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□Level.20 まやかし
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イノリ達がルビークへ行っている間、クリスを始めとするゼクセン騎士団員は、炎の運び手ではなく騎士としての用向きのために、一旦ブラス城へ戻ることになった。
評議会からの使者との面会やら少々の書類仕事やら、それほど大した用事ではないのだが、それらを無視し続ける訳にはいかないのである。
出発する前、クリスは使者をビュッデヒュッケ城に呼べないのか、とヒューゴに不思議そうに聞かれたのだが、それが不可能なのがゼクセンという国なのだ。
馬を走らせて広大な草原を抜け、久し振りのブラス城に到着すると、クリスはある小さな異変を感じ取った。
「何だ?正門の方が騒がしいが…」
「さぁ…いつもの、交易商同士の喧嘩でしょうか?」
サロメは、騎士団長の帰還に気付かず慌ただしく正門へ駆けていく兵士に、特に危機感を募らせることはない。
しかし、だからといって放っておく訳にもいかず、落ち着いた足取りでそこへ行ってみれば、クリス達はある意味異様な場面に出会うこととなった。
「だから、今クリス様はご不在で…」
名もなき兵士は困却していた。どうやら彼が何度も繰り返し説明している相手の女性こそが、騒ぎの原因となっているらしい。
グラスランドとゼクセンの交流が盛んになってきたとはいえ、グラスランドの中でも特に閉鎖的な部族に属する彼女がこんな所に現れれば、騒ぎになるのも当然なのかもしれない。
近代的な石畳の城下街に全く馴染まぬ、どことなく神秘的な空気を纏う彼女は、
「じゃあ、あれは誰?」
と、兵士の後方を指差した。振り向いてみれば、その先にいたのが不在であった筈のクリスとサロメだったので、彼は面食らいながら敬礼した。
「あ、これはクリス様。気付かなかったもので、申し訳ありません」
「いや、今着いた所だ」
兵士を困惑させていた女性は、やっと対面の叶ったクリスに歩み寄り、美しく整った造作に喜色を漂わせる。
「やっと会えたわね、クリス」
その対面は、再会だった。クリスが父を探すための旅の中で出会ったアルマ・キナンの女性、ユミィ。
久し振りに会ったせいだろうか、彼女の雰囲気が以前とは何となく異なっているように感じたが、クリスも表情を緩ませた。
「あれから、いろいろあったからな」
「そのようね。大おば様の許しが出ないので、私達は村の外に出られなかったんだけど…今、アルマ・キナンの村が“破壊者”に何度となく襲われて、このままでは儀式の祠を奪われてしまいそうなの。それで、私があなたの力を借りにきたという訳」