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□Level.18 ねがい
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「ハルモニア神聖国…いや、神官長ヒクサクは真なる27の紋章を全て集めることを欲している。しかし、真の紋章は、紋章に認められた継承者しかその身に宿すことは出来ず…また、封印することが出来る場所も限られている」

「それで…」

短い言葉で話の続きを促すササライだが、その口は緊張ですっかり渇いていた。

「それで、ヒクサクはある秘法を手に入れたのさ。自分の元に、真の紋章を留めておく秘法をね」

ルックが手を上げると、光の瞬きと共に、そこに球状の物体が現れた。
球体は半透明な液状物質で満たされ、その中には得体の知れない何かが浮いている。

「な、何だ…?」

見れば見るほどに不気味な球体に、ナッシュが顔をしかめる。

「封印球さ……ただし、普通のじゃない。真なる27の紋章を封印するためのものだ。この中身が何か分かるかい?」

「それは…まさか…でも…この感じは…」

生き物のように鼓動を打つ球体。それに対してササライが感じたのは、目の前にもう一人の自分が現れたかのような感覚。
ルックと初めて出会った時に味わったものと同じ、奇妙な感覚だった。
ササライは感じ取ってしまったものから思い至った答えを、認めたくなかった。
だがルックはそれを許さず、淡々と真実を告げる。

「そうさ…僕ら自身だ…手、足、頭、目、鼻、口、全てがこの乳白色の液体に溶け込んでいる。人間の材料だよ。そして…」

「う…うぅぅ……」

激しい嫌悪感に襲われたササライは、その場に崩れ込んで嘔吐していた。
ルックは真実を受け入れられずに目を背ける彼を見下ろし、更に追い詰めていく。

「見るんだよ、兄さん!これが僕達だ!真の紋章を宿すために…それを核に作られた生き物だ…人間の形をした何かだ…継承者たるヒクサク自身の不恰好な複製だ!!」

「くそっ!!」

ナッシュは袖口に隠してある短剣を抜き、ルックに斬りかかろうとした。だが、その切っ先が彼の身体を裂くことはなかった。
次の瞬間には、彼は風を操って、ナッシュの身体を弾き飛ばしていたからだ。

「真の土の紋章は、貰い受けて行くよ。あなたには、必要のないものの筈だ」

「し…しかし……」

反論しようとするササライの青ざめた顔を睨み、ルックは非情な言葉を突き付ける。

「それとも…それを知っても…あなたには生きていく力があるというんですか?」

「…う…っ…………」

精神的に打撃を受けたササライは言葉を失い、もはや抵抗する気力も失せていた。
うずくまる彼の頭上で、人間のパーツで中を満たされた封印球が、光を放ち始める。




イノリの見ていた夢は、そこで途切れた。
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