player:prayer
□Level.13 つどい
9ページ/23ページ
「それから、ゲドもね」
「何がだ?」
「何が…って、本当は分かってるくせに。ゲドも『先輩』としてヒューゴを支えてあげてってこと」
イノリが人差し指を突き立てると、ゲドは自らの右手に目を向けた。
「…同じ苦しみを知る者として、より大きな運命と責任を背負っていたソルを、出来る限り支えてやろう…と、誓った事がある」
ここで初めてクリスはゲドが何者か理解したらしく、驚きに口元を押さえていた。
「今度は、炎の英雄の名を継いだヒューゴを助けるために…この紋章の力を使おう」
「それ、本人の前で言ってあげた方が良いと思うんだけど…まぁ、いいか」
イノリは満足げに口の端を上げる。
「ちょっと待って…!じゃあ、あなたは……50年前の……父の………」
クリスがゲドに詰め寄ろうとしたその時。
何の前触れもなく強い光が発生し、部屋を明るく照らし出した。
「! ……な、何これ!?」
光が生じた点の中心にいたイノリが悲鳴のような声を上げる。
何故イノリを中心に光が生じたのか。
光が解けた時に、その謎も解けた。
「何で今……翼が生えるわけ…?」
イノリは右に振り返り、左に振り返る。
薄く光を帯びる翼が背中に生えていた。
「…二人にも…見えちゃってるよね…?」
唖然としているクリスを見、初めて見たわけではないからか大して驚いていないゲドを見る。
二人とも小さく頷いていた。
「…あいつが、試練に打ち勝った…ということか」
「え…ゲド、どういう意味…?」
試練という単語を聞き、イノリは封印の間の方へ向き直る。
丁度ヒューゴが戻ってくるところだった。
すなわち、彼が真の火の紋章を継承した、ということだ。
サナに支えられ、肩で息をし、よろよろと頼りない足取りのヒューゴ。
だが、先程までとは雰囲気が違い、気迫に満ちた顔つきになっていた。
その変化をもたらしたのは、彼の右手に浮かび上がる、真の火の紋章。
…確か、最初に私の力を解放する切っ掛けとなったのは、真の雷の紋章の力…。
ビュッデヒュッケ城でゲドとジョーカーの会話に聞き耳を立てていた時と同じらしい。
「羽が現れたのは……丁度ヒューゴが真の火の紋章の封印を解いて、その近くにいる私の力が反応したから…か」
イノリはとりあえず自己完結するが、内心もやもやしていた。
そもそもイノリは、自分の持つ力について知らない事が多すぎるのだ。
だがその事に不満を抱いても、力の説明書もなければ、知識を持った人もいない。
誰か、自分の力について詳しく知っている人間はいないのだろうか。
イノリはちょっと考えながら、新たな炎の英雄を笑顔で出迎えた。