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□Level.13 つどい
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「ソルは、私にいくつかの言付けを残しました。私が、今日ここに来たのもそのお陰…」
この部屋の奥には、もう一つ部屋があるらしく、大きく厳かな扉が見えていた。
サナはゆったりした足取りで、その方へ進む。
「…真なる紋章を宿した彼には、いくばくかの未来が見えていたのかもしれません」
真の紋章が宿主に見せる、未来の記憶。
それは自由を求めるソルにとっては、邪魔なものでしかなかっただろう。
サナが扉の前に行き着くと、彼女はこちらへ振り返り、告げる。
「彼の封じた"真の火の紋章"はこの奥で古シンダルの秘法に守られて、静かに眠っています」
サナに続いてイノリ達も扉の方へ寄る。
遠目に見ればただの壁と見紛いそうだが、近くから見れば、何かを封印している、という雰囲気たっぷりの、怪しげな紋様の描かれた扉だった。
「あなた方が、望むのなら…そこへの扉を開きましょう。それは、炎の英雄の名と力と悲しみを受け継ぐことになります」
サナの静かで厳しい言葉。その重さに、暫しの沈黙が流れる。
「炎の英雄の名を受け継ぐ?」
「それは……誰が?」
「我々の中に、炎の英雄の後継者がいるというのか?」
ヒューゴにクリス、ゲドまでもが疑問符を声に表す中、イノリは口を閉じていた。
この3人の中の誰かが新たな英雄となるのは、イノリにとっては既知の事だ。
…でも、一体誰が真の火の紋章を受け継ぐんだろう…?
それだけはイノリにも分からなかった。
「ソルは、時折言っていました。運命はうつろいやすく、それは定められたものではないと。人の意志の力の前には、運命さえも道を譲るのだと…」
サナは英雄の信念を聞かせた後、難しい顔をしているイノリに視線をやった。
「…イノリ、あなたがここにいるということが…その証になるでしょう」
「…わ、私!?…どういう意味ですか」
急に名前を出され、イノリは狼狽した。
自分が「運命が不定である証だ」などと言われても、まるで心当たりがない。
「ソルが、この地に現れると言い残したのは…ヒューゴ、クリス、ゲドの3人…」
その3人の視線が一斉にイノリに注がれた。
「ところが、ここにいるのは4人。……ソルの見た未来を、運命を…イノリはその強い意志で変えてみせました」
「私が、運命を…変えた……?」
「えぇ…運命とは、そういうものよ」
確かにサナの言う事は理にかなっている。
だが、些細な気持ちからゲドの後を追っただけのつもりのイノリには、どうにもその実感は沸きそうになかった。