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□Level.13 つどい
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「『好きなように生きて、好きなように死ぬ』そう言って…彼は、自らの身に宿った真の紋章を、古シンダルの秘法を使って封じ、私と共に……朽ち果てるのを選んだのです」

「全く…いつもそういうヤツだった…」

かつての友が選んだ生き方を聞かされ、ゲドは呟いた。
その反応から見るに、彼は炎の英雄が真の火の紋章を外す可能性を、最初から考えていたのかもしれない。

「じゃ、じゃあ…炎の英雄は…グラスランドの地を守る英雄は…もう……」

「あなたの大事なものを守るのは、形なき死者の影ではなく、あなた自身のはずですよ、少年」

うなだれるヒューゴに言い聞かせるサナ。
彼女の言葉は真理だった。

「しかし、ハルモニアの軍勢を前に争いを続けるグラスランドの諸部族とゼクセンをまとめるには……」

クリスは、険しい表情でサナを見つめ、リーダーの必要性を示唆する。
どこか不安を含んだクリスの視線を、サナは真っ直ぐに見つめ返した。

「ソルは、それを英雄の名ではなく、自分自身の力で成し遂げました。そうでしょう?」

『英雄』とは、功績を残した人物が、後に人々に讃えられて付けられる称号。
炎の英雄ソルも、最初から英雄と呼ばれていた訳ではない。

かつてゲドはその彼と、共に戦っていた。
真の紋章を持つ仲間であり、親友だった。
紋章に対する考え方や性格について、ソルの恋人であるサナよりも、深く知っている部分もあっただろう。

「………………」

彼は口数は少ないが、非情とは違う。

紋章を捨て、人として死を迎える。
友の信じた選択を、彼も認めたいだろう。
その選択の結果、友は死を迎えた。
それをすぐに認めるのは、さすがのゲドでも心苦しく、難しいことのはずだ。
今の彼の沈黙がどこか寂しげに感じられたのは、彼の気持ちがそうあるからだ、とイノリは思った。

「ゲド…あなたはまだ、ソルを許すことが出来ないのですね。いつもそうだった…あなたはいつも理想主義者で、ソルはいつもあなたに励まされていた…」

それまで昔を思い出して微笑みを浮かべていたサナの顔が、うっすら陰った。

「でも…時には、それが彼を傷付けていた事を知って欲しかった………」

「…………………」

ゲドは反論せず、自らを省みるように目を閉じて黙る。
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