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□Level.13 つどい
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まず感じたのは、暖かさだった。
反射的に閉じられていた目を開けると、湿った洞窟から景色が変わっていた。
目の前に現れたのは、長く続く回廊。
長い通路の両端に、一つ一つに明るい火が点されている高い柱が沿って並んでいる。
暖かく感じる原因はそれのようだ。
背後に道はない。それはゲドとイノリが洞窟の魔法陣のテレポート魔法によってこの場に飛ばされたという証拠だった。
「……………お前だけか?」
回廊にはイノリとゲドだけがいて、他の仲間達の姿はどこにもなかった。
テレポートが機能しなくなったのかもしれないし、違う場所に飛ばされたという可能性も捨てきれない。
「そうみたい。…どうする?皆が来るのを待ってみる?」
「いや…いい。俺達だけで先へ進むぞ」
ゲドの一見非情な判断も、皆の無事を信じているゆえのものである。
イノリは頷き、二人は先を目指して炎の燃える柱の間を突き進む。
光源があり視界が保たれた道は、距離感を掴むことが出来る上、暗闇から魔物が飛び出してくるかもという心配は不要なので、心にゆとりが持てた。
一本の長い通路をひたすら進んでいくと、巨大な扉の前に出た。
「…ふぅ、疲れた。やっと着いたね…」
「この扉の先だな………」
観音開きの扉にゲドが軽く手を触れると、それだけで扉はごろごろと大きな音を立てながら勝手に開く。
扉の向こうに、広い部屋が現れた。
異様に張り詰めた空気の部屋。
その中に進み、ゲドはそこにいる人物に声を掛ける。
「久し振りだな、サナ…………」
「久し振りね、ゲド…あなたは、あの頃と変わりなく…」
優しい声でゲドと同じ言葉を返したのは、滑らかな布地で出来た頭巾で頭を覆った老婆だった。
チシャの村の村長、サナ。
若い頃は麗しい女性だったのだろう。
年齢を重ねて皺びた中に美しさを残した、上品で柔らかな顔立ちだ。
そして、彼女の他に二人。
一人は少年。
淡い金糸のような髪は、毛先だけが黒い。
褐色の肌は、筋肉の付き始めた少年の身体をより引き締まったものにみせている。
袖の付いていない動きやすそうな服や装飾品には、彼がグラスランドの民だということを見て取れる民族的な模様がある。
もう一人は、若い女性。
長く伸びた銀髪は、艶やかに輝いている。
女性にしては長身で、しなやかでありながら凛とした姿で背筋をぴんと張っている。
革の上着にスカートを合わせたシンプルなお忍びの旅装という格好の中に、気高い風格は隠しきれずに滲み出ている。
カラヤ族の族長の息子、ヒューゴ。
ゼクセン騎士団の団長、クリス。
対立する関係の二人がここに揃っていた。
無慈悲な戦に翻弄され、大切な人を奪われた者、奪ってしまった者。
お互いどう接したらいいか分からず、会話を交わすことなどないヒューゴとクリス。
代わりに流れているのは、どことなくぎすぎすした空気だった。