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□Level.7 あきす
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「無理って…何で?」
自分が意識を取り戻したらゼクセンに発つとばかり思っていたイノリは、目をぱちくりさせながら顔を横に傾ける。
もしかすると、カレリアに留まらなければならない事情があるのかもしれない。
「…炎の運び手の捜索とは別に、秘匿の任務を受けることになった」
イノリは自分の耳を疑った。
本日二回目の驚き。しかしドッキリでないことは、彼の性格上確かだ。
…秘匿の任務?そんな展開は、シナリオにはなかったような…。
それは、削られた話なのかもしれないが、イノリという異分子の介入によって、新たに発生したものかもしれない。
それはそれとして、イノリは尋ねる。
「もしかして、お金…ないの…?」
これ以外に、新たな任務を受ける理由が思いつかない。
「あぁ」
ゲドは平然と頷いた。チームのお財布が危機的状況にあるのならば、仕方がない。
むしろ経済的苦境に陥っていることには、イノリ自身も責任を感じていた。
防具や衣類などを、ほぼ一文無しのイノリに買い与えてくれたのは、彼らだ。
わいわい騒いで飲み食いした時も、イノリ一人加わっただけで、結構な金額になっていたのかもしれない。
「任務の内容は?」
負い目を感じ、積極性を見せるイノリ。
「…潜入だ」
そして内容を聞き益々沸いてくるやる気。
それは傭兵の仕事の域を超越している気もするが、言葉の響きにはロマンを感じる。
「…だから二人だけって訳ね。でも傭兵に潜入まで任せるんだ、ハルモニアって」
「それなりに信頼されている、という事だ」
ブーツに足をねじ込んでいるイノリに、ゲドはいつもの無表情で言った。
「…そんな大事な任務に私を連れてくって事は、私も信頼してくれてるの?」
「…そういう事だ。行くぞ」
荷物をまとめ、部屋のドアを開けて外に出ようとしているゲドの頼もしい後姿を、イノリは呆然と眺めた。
適当に返事を返しただけかもしれないが、彼はイノリを信頼しているらしい。
思わぬ言葉にイノリの顔は綻ぶのだっだ。