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□Level.6 きずな
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イノリはデューク率いる十四小隊と共に、神官将の護衛のためセナイ山に足を運んでいた。
護衛とは言っても、ルック達にくっついて歩くわけではなく、距離を置いての同行だった。
後をつけてくる怪しい人物がいないかどうか見張る役割、とも言える。
護衛とも距離を置く時点で彼ら自体に怪しさが漂っているのだが、十四小隊は報酬さえあれば依頼人の事情には立ち入らないらしい。傭兵の鑑である。
セナイ山の中の洞窟は何本かの枝道や橋があり、空気がひんやりとして湿っていた。
微かな空気の流れに寒さを感じて、イノリは身震いして腕をさする。
「はぁ…こんな事になるなんて…ついてない」
「お前、一体神官将様に何したんだ?」
ぼやくイノリの前を歩くデュークが振り返り尋ねると、イノリは小走りで彼の隣に追い付いてきっぱりと言った。
「私は…ただ、くしゃみをしただけ」
「………それだけで捕まったのかい?災難だったねぇ…」
笑いをこらえながら口を挟んだのは、大胆に肌を露出し、左手にガントレットを着けた、ポイントメイクの濃い金髪の女性。
「エレーン、全然災難だって思ってないでしょ…」
彼女の名前を呼んで、大袈裟に肩を落としてみせると、声をあげて笑われた。
確かに笑われても仕方がない。
「…あのさ、私って足手纏いでしょう。置いてってもらっていいんだよ?」
遠回しに解放しろと言ってみるが、
「神官将様から直々に世話をあずかったんだろう?我慢してくれ」
大きな盾と斧を持つ真面目そうな雰囲気の男、ニコルにそう言われてしまうと、なんとなく逃げにくい。
「さすがに神官将様の言い付けを破る訳にはいかないわよねぇ?」
「あぁ」
それまで黙っていた隻眼のコボルトのガウまでも、イノリを逃がすのに反対する意思表示をする。
「デューク、お願い!帰らせて!」
「ダメだ」
両手を合わせるイノリをばっさり切り捨てるデューク。隊長の決定は絶対だ。
これ以上駄々をこねても無駄そうだ。
しかし、イノリは何とか彼らを納得させて、早く十二小隊に合流したい。
自分達と同じくこの山に来ている筈の彼らと直ぐに合流出来ないのが、とにかくもどかしいのだ。
「…本当に私を連れてっていいの?後悔するんじゃない?」
イノリはわざと含みのある言い方をした。
意味ありげな言葉に、一瞬広がる沈黙。
「…どういう意味だい、それは?」
意味が分からない一同を代表して、エレーンがイノリに聞き返した。
「実は私、十二小隊に所属してるの。だから、私達ってライバルなんだよ?」