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□Level.5 くしゃみ
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「任務についての連絡だ。任務にはこいつも同行させろ。これは命令だ。今からこいつの身柄をお前に預ける。任務が終われば自由にさせてやれ」
一気に説明されたデュークは、イノリの頭から爪先までを不思議そうな顔で眺める。
「ガキのお守り、ですか…分かりました」
聞き捨てならないデュークの発言に、イノリは憤慨した。
「ガ、ガキ扱いしないでよ!私は…」
「はいはい、まぁ宜しくな」
デュークは笑いながらイノリの頭をわしわし撫でた。明らかにガキ扱いされている。
「じゃあ行くぞ、お嬢ちゃん」
「イノリです!」
イノリはデュークに連れられて、外へと出ていった。
張り詰めた空気からは解放されたが、イノリ自身は解放されず、何だか面白くない。
「任務は神官将様のボディーガードだ」
「分かった。場所は?」
「虫使いの祭壇だ。そこで、神官将様を狙う悪い奴を討つ!」
神官将様を狙う悪い奴。イノリもゲド達と一緒にそっち側にいる筈だった。
ただのくしゃみのせいでこんな事になってしまったが、再会のチャンスは、ある。
そう考えたら、たちまちやる気が出てきてしまった自分は、なんて調子のいい奴なんだ、とイノリは苦笑するのだった。
「よし…私、頑張るから!」
「おう!頑張ろうぜ!」
イノリの「頑張る」は皆と合流するため。
デュークの「頑張る」はゲドに勝つため。
同じ言葉でも全く通じあっていないが、2人とも同じように心に気合が入っていた。
ジョーカーは村人から話を聞いて回っているゲドとエースの姿を見つけると、彼らの元へ急いだ。
「大将…なんだか、虫使いの祭壇の警備を削るとか、そういう話じゃった」
「よく聞こえるもんだ、ジジイの地獄耳だな」
揚げ足を取るエースを睨み、ジョーカーはそれを否定する。
「違うわい。唇の動きで声を拾うのじゃ……それから、」
「どうした?」
ゲドに続きを促され、ジョーカーは一瞬の逡巡の後に報告する。
「…イノリが神官将に捕まった」
「マジかよ?!何でまた…」
「隠れていたのだが、大きなくしゃみをして見つかりおった」
「…………………」
「ははは、アホだな……で、大将、イノリを探しますか?」
ゲドは悩む間もなく答える。
「神官将殿に直接尋ねればいいさ。…出発するぞ」
「了解、他の奴らを呼んで来ます」
エースは残る仲間に虫使いの祭壇への出発を伝えるため、細い橋を駆けていった。
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