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□Level.5 くしゃみ
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祈る気持ちでルックの返答を待つ。
イノリは一刻も早くゲド達の元に戻りたいという気持ちでいっぱいだった。

「…僕らの今後の行動を知ってしまった君を、すぐに解放するつもりはない」

さっさと帰してくれるとばかり思っていたイノリは、最悪の展開に肩を落とす。
だが、そこにルックが付け足した。

「今部外者に知られてそれを黙認することは出来ないが、…後からなら誰に知られても構わない」

「…つまり、今だけ私の身柄を拘束するという事ですね?」

イノリの顔の緊張が解れる。

「そういうことだ。…だが、君に同時に仕事を与える」

「え…な、なんですか…?」

「ちょっと待っていてくれるかい、もうすぐここに来る」

「…?」

イノリは仕事の内容を伝えずに「ちょっと待て」というルックに戸惑うが、素直に従い待つことにする。
反発して処遇を悪くされてしまったら、元も子もない。

「あの、さっきの冗談…詳しく聞かせて頂けませんか?」

待つ間にイノリはダメ元で尋ねてみた。
自分の事についてのヒントが、少しでも欲しかったのだ。
どうせ答えてくれないだろうと思ったが、ルックはあっさりと喋ってくれた。

「…異世の女神は、剣を空間から生み、光を操り、その背に翼を宿している…と言われている」

一番最後の言葉に、イノリは思わず「えっ?」と聞き返しそうになる。

「私の背に翼なんかありませんからね…」

イノリはぎこちない愛想笑いを浮かべながら、心を波立たせていた。


…どうして、ないの?
ルックの話では、私には翼があるらしい。でも、そんなものはない。



イノリが不安に沈んでいると、コンコンと建物の扉がノックされた。

「失礼します」

ゲドとはまた違うタイプの男の声。
やはり十二小隊の誰かが迎えにきた訳ではないか、とイノリは落胆したが、ルックはその声の主を待っていたようだ。

「入れ」

ルックが言うと、1人の男が入ってきた。

橙色がかった金髪に、額には迷彩柄のバンダナが巻かれている。
神官将を前にして、無精髭の生えた顔は、生き生きと輝いていた。
何よりも印象的なのは、右頬から左頬にかけて走る傷跡。

その男は、ゲドの事を勝手にライバル視している十四小隊隊長、デュークだった。
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