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□Level.ex あるひ(AM)
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探偵調査報告



「よぉ、探偵さん。頼んでおいたことは、ちゃんと調べてくれたかい?」

それは、少年にとっては愚問だった。
彼は被っている帽子を軽く持ち上げると、大きな瞳をきらりと輝かせた。

「ナッシュさん。もちろんだよ!怪事件も人探しも素行調査も、この名探偵キッドにかかれば、容易いものさ!」

「助かるぜ。俺が聞こうとしても、答えてくれなさそうだが…さすがに子供相手なら、警戒心を抱かないだろうからな」

ナッシュは喜んでいた。
子供とはいえ、探偵がいる。キッドに調査を任せれば、自分が言い渡された調査任務に手を抜くことが出来るだろう。

「イノリさんについての調査内容は、ここに全部まとめておいたよ。何か困ったことがあったら、また僕を呼んでくれ!」

キッドは小さく折り畳まれた紙をナッシュに渡すと、怪事件を求めて去っていった。

「…ササライ様も、大雑把だよな…」

ナッシュの元にササライから『イノリについての情報を集めろ』という一文だけの書簡が届いた時は、彼も首を傾げたものだ。

何故、彼女の情報を欲しがるのか。
ナッシュは任務を了承する旨と共に、そう返信した。その後ササライから届いた書簡に、彼は目を疑った。

何でも、イノリという女は、真の紋章に並ぶ強い力を持っているらしい。
しかし、彼女が力を解放するには、真の紋章の力に触れなければいけないとか。

それ以上のことはまだ知らないのか、それとも隠したいのか。ナッシュがササライから知らされたのは、それだけだった。

「どれ、小さな探偵さんは、何か有力な情報を掴んでくれただろうか…?」

ナッシュはやっと、キッドの調査報告の書かれた紙切れを開いた。



『イノリに関する調査報告』

・プロフィール
南部辺境警備隊第十二小隊の魔法防衛担当。過去は一切謎の明るい女の子。

・調査1
色んな知識を浅く広くもっていて、人とすぐに仲良くなるのが得意のようだね。
どの人も、初めて会った気がしないとか。

・調査2
警備隊に入ったのはつい最近なんだって。
魔法でゲドさん達を助けたことがきっかけで、スカウトされたらしいよ。
あまり強そうに見えないけどね。

・調査3
他の隊員と違って仮名を使っていないのは、自分の過去や身元を知っている人が誰もいないからなんだってさ。
警備隊に入る以前の知り合いは、この辺りでは一人もいないらしいよ。
きっとすごく遠い国から来たんだろうね。
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