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□Level.12 じゆう
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昔の事





まるで昨日の事かのように鮮明に思い出せる、遠い昔の色褪せた記憶。

それは矛盾した感覚。

本来の人間としての生を失い、時の感覚に狂いを与えたのは、俺を時の流れから弾き出したのは、右手に宿った真の紋章。


昔は、俺と同じように真の紋章をその身に宿し、不老の力を得た者が他にもいた。

彼らを「友」と呼び合い、終わりの見えない生の中の一時を、彼らと共に戦乱に身を投じた日々。
やがて長きに渡る戦いは終わりを告げ、迎える友との別れ。


俺は、古い記憶を思い起こしていた。
共に戦い共に歩んだ盟友と袂を分かった、この地での古い記憶を。






『行くのか……ゲド?』

今より小綺麗な外観の城を庭から眺めていたワイアットは、後ろで同じようにしていた俺に顔だけ振り返った。

『あぁ…仕事は終わった。あいつが望んだように…この地はゼクセンのものでも、グラスランドのものでもない場所になった』

世界の均衡を保つために、真の五行の紋章はいつかまた宿主達を結び付けるだろう…と俺は確信めいたものを持っていた。
故に、俺は別れを惜しむような言葉を吐くことはなかった。

『何故、こんな事を…』

分かりきったことを尋ねるワイアット。
それは、俺達が持っていないものを確かめるために聞いたようにも感じられた。
だから、俺は素直に答えてやった。

『あの男は、永遠に自由であることを望み続けた。運命からも、紋章の力からも。これだって、その一つ。あいつにとっては、気紛れの一つだろうが…その無邪気さが、俺には羨ましいよ』

『あぁ…結局、俺はグラスランドに縛られ、お前は外に居続けることに…。だが、あいつはそんなものさえひょいと飛び越えてみせた。それに多くの人間が未来を見た』

俺とワイアットが「あいつ」と呼ぶ、この場所にいないもう一人の友。
ここは、自由を求めたあいつと別れた最後の場所。
だからここを自由な場所にしたかった。
そう思って行動し、ワイアットと共にそれを成し遂げた。


『俺達には永遠の生がある。だが、それを束縛でなく、自由として感じることが出来る日が来るんだろうか?』

ワイアットは忌々しい程の紋章の恩恵の宿る右手を握って顔の前に持っていき、蒼い双眸で蒼い象徴を睨んだ。
俺はワイアットの質問を否定も肯定も出来ず、奴に背を向けて呟く。

『その日が来ると……望んでいるよ……』




あいつは、永遠の生の中で自由を知ることが出来たのだろうか。
俺は、この地のように自由を手に入れることが出来るのだろうか。

答えは、未だ――――
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