私立流星学園

□第二話
1ページ/22ページ

一週間の謹慎を終えた朝、秋名は制服に着替えていた。
髪を三つ編みにして眼鏡をかけると秋名は鞄を持って部屋を出て行った。
普段からエレベーターは使わない秋名はエレベーター横の階段を降りていた。
三十階も降りなければいけない時間を計算して早めに部屋を出たせいのと階段を使っているせいか、他の生徒とは会わずに一階まで降りてきた。
一階まで行くとさすがに人気があった。
「ちょっとあれ」
「謹慎解けるの今日だったんだ」
などと言う言葉を聞きながら秋名は校舎に向かった。
校舎に着いた秋名を待っていたのは憎悪と恐怖の視線だった。
「あれが会長の腹に蹴りを食らわせたんだって」
「あんな根暗が信じられないよね」
そんな声も聞こえていないかのように秋名は教室に向かった。
秋名が教室に入るとすでに数人が来ていて話をしていたが、秋名が来た途端に押し黙ってしまった。
席に行こうとした秋名だったが、自分の机の上に何かが置かれていることに気付いた。
それは花瓶に挿さった菊の花だった。
秋名は少し考えた後に何もせずに席に座って花を見ていた。
時間も経ってクラスの全員が揃っても動かずに花を見続けていた。
やがてチャイムが鳴って担任の隆二が教室に入ってきてショートホームルームを始めようとしたが、秋名の机の上の異変に気付いて秋名の所まで近付いてきた。
「なんだこれは?」
「花瓶と花です」
「それは分かっている。なんで除けるとかなんなりしないんだ?」
「邪魔じゃないからです」
邪魔だったら除けるのか、という言葉を隆二はなんとか飲み込んだ。
「邪魔とかじゃなくてこれは明らかに悪意が籠ってるだろうが。そんなもんいつまでも置いとくな」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ