獣使い

□第一話
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キィンッという甲高い金属音が幾つも響き時折赤い飛沫が散る。
その間を炎が飛び交い、風が刃のように通り抜け、水柱が上がり氷の雨となって降り注ぐ。
戦の光景だった。
対峙しているのは青の鎧を着たガルバディア帝国と灰色の鎧を着たシーバ王国だ。
戦況はシーバ王国の方が優勢だった。
このままではガルバディア帝国が負けてしまうといったその時、一人の伝令役が喉が潰れんばかりに大声を張り上げた。
「《獣》軍が来たぞ!《獣使い》のおでましだ!」
伝令役の言葉はシーバ王国の兵士にも伝わり一気に動揺が走った。
この世界には動物とは違う《獣》と名付けられた生き物がいる。
《獣》とは明らかに動物とは違った、例えば体長5メートルはゆうに越す鳥、異常に両腕が発達した熊、人間ほどの背丈を持ち二本足で立ち炎を吐き出すトカゲ、などの特徴を持ち凶暴性が非常に高い生き物のことだ。
その《獣》は動物と違って人が飼育できるものではない、筈だった。
少なくとも15年前までは《獣》を従えられる者など世界中どこを探しても居なかった。
それが現れたのだ。
ガルバディア帝国第三皇位継承者にして第二皇子であるイシュタル・アウラ・ガルバディア、それが弱冠15歳にして
幾つもの戦績をあげ、《獣使い》の称号を得た少年がその人だった。
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