廃墟の外の雨はますます酷くなり、剥き出しのコンクリートに雨が容赦なく打ち付ける。 けれど、建物の中だけは別世界のように雨音が遠くに聞こえる。ただ単に神威が寝ぼけているせいかもしれないが。 「あー、これじゃ帰るのは難しいな。」 ひび割れた窓から外の様子を見ている封真はどこかのんきだ。タワーが崩れないか心配だと口では言っても、表情からはそんな気すらしていない。 そんな彼の独り言をベッドの中でまどろみながら、ただ聞いていた。体は先の行為で少しはだるいものの、慣れたものだ。逆に愛しくも思えてくる。封真にそれを伝えれば、もう一戦挑まれそうなので口が裂けても言わないが。 「起きた?神威」 窓際にいた封真がベッドへ戻ってきた。封真から微かにただよう湿った匂いに雨の気配をしっかり感じた。 「すごい雨だよ」 さっきから聞こえてたとは言わず、黙ってベッドの端に移動する。封真のスペースを空けてやったのだ。意図を理解したらしい封真がニコリと笑っ た。そしてベッドにギシリと音を立てて重みと温もりが戻った。 封真の腕は神威を捕らえて、ぎゅっと包んだ。ふたりの温度が心地よく混ざっていく。その温もりに神威が再びまどろみ始める。 その様子が可愛く思えて、封真の手が神威の胸を優しく叩き始めた。ぽんぽんぽんと体に伝わる振動は神威さらに夢の中へと誘い込んだ。 「おやすみ、神威」 封真が囁いたのを聞きながら神威は暗闇に身を委ねた。胸を叩くリズムと共に心地よい眠りの階段を降りていった。 静かな寝息を立て始めた神威に向ける視線は自然と優しくなる。こんな穏やかな時間があとどのくらい過ごせるのか……、だからこそ今この一時が愛おしく思えた。 嵐のような雨は止むことを知らずに降り続ける。 上がれば虹が出るだろうか? ふっと虹を見て喜ぶ神威の顔がよぎった。 うん、そんな神威が見られるといいな。神威の胸を叩く手を止めて、腰に回す。 ぎゅっと抱きしめて神威の体温を感じれば、封真にも眠気が降ってきた。 願わくば目覚めた時、眼下に広がる虹が艶やかでありますよう。 end. 君の傍にいられるのも、あと少し。 |