あそび

□恋にするには、
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 昴流に進められ、星史郎はソファに座った。仕事の報告だったはずだが、好奇心には勝てない。まさか自分の勤めている会社の社長が目の前の青年とは。星史郎の好奇の目に、昴流は慣れたように話した。

「もともとは祖母の立ち上げたこの会社を僕が引き継いだのですが、年齢とこの見た目では社員の統率力に影響してしまうので……、露出を控えているんです」

これでも三十一歳なんです、と苦笑しながら話す昴流に。てっきり年下と思っていた星史郎も苦笑するしかなかった。




 企画内容報告をそうそうに終わらせ、なぜか二人で、本の趣味や映画の話しに花が咲いてしまった。昴流の聞き手上手な謙虚さや、回転の早い会話に。普段あまり喋る方ではない星史郎も自然と口が開いた。

 もうこんな時間、と昴流が呟き、ちらりと自分の時計を覗いて驚いた。

「すみません、こんなに長居をしてしまって」

「僕の方こそ……!」

慌ててソファから腰を上げる星史郎に、昴流もつられて一緒に立ち上がってしまった。

会社のトップに立っている人間とは思えないほど、謙虚で素直な行動に。思わず、星史郎の頬がゆるむ。どうしたらもっと近付くことができるだろうか、星史郎は昴流の隣へ進む。

「もし、この企画が成功したら…」

少し媚びるような声色を出して、昴流の瞳を覗き込んだ。昴流も、くりくりとした大きな瞳で星史郎をみた。

「あ、なにかそれなりの待遇をしなければなりませんね。ボーナスを上げましょうか」

「いえ、ボーナスには現状満足ですよ」

「だったら……」

「社長とのお食事がいいです


えっ、と声を上げて驚く昴流は誰が見たって少年のようだ。

「ご褒美は、どこか美味しいところへ連れていってください。もちろん二人で」

「そんなので、いいんですか?」

「はい、十分すぎますよ」

桜塚さんは変わっていますね、と笑顔を見せる昴流に。肯定だとわかった星史郎は必ずこの企画を成功させるとひそかに誓った。




end.

20080509






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